岡田斗司夫のクリエーター夜話「プチクリ講演会」in多摩美術大学 その2 質疑応答編
前回の続きです。
プチクリに関する講演は終了し、質疑応答へ。
なお、質問についてはメモをとりきれなかった部分もあり、他の部分にも増して不確かなとこ褄もあるのだが、悪しからず読んで欲しい。
「バクマン」について何か
- あの原作者は「デスノート」の時もそうだったが、「いかに面白い理屈をこねれるか?」ということに重きを置いている。
- ジャンプ編集部を舞台にしている限り、取材がいらない。これはもの凄いアドバンテージ。
- でも、最近の掲載順位は後ろの方。アンケートでの人気がそんなに無いようで心配。初連載時の作者コメントも「スケールの大きな話になる予定ですので、構想の最後まで描きたいです」みたいなことが書かれていた。なんて後ろ向き!
アニメーターをやっているのだ、以前蛙男商会が「将来的にネットを利用して2万人でFlashアニメを作りたい」とコメントしていて、自分には全く無い発想だったのでショックを受けた。アニメ製作の未来というのはそういう方向に進むのか?
- もの作りには大きく分けて二種類ある。一つは編集長みたいなものを置いて、「俺が好きなものを俺の責任で作る!」というタイプ。たとえばビルゲイツなんかは編集長タイプ。もう一つは、Mixiみたいな、もの作りの場というか環境を作るタイプ。
- リーダーというものはどんなに頑張っても悪口を言われてしまうもの。世界で一番悪口を言われない為には?という発想が根底にはある。この成果があがったのは特定の誰かでもなく皆のおかげ、失敗したのも特定の誰かではなく皆の責任、というやり方でもある。リスクが小さい割に利益が大きい。
- つまり、もの作りが芸大的中央集権的なものから、環境を整えた場を作ってその中で自由にやらせるというタイプに変化してきた。これが時代の流れなのか、もしくは一時的な現象で将来はまた編集長タイプに戻るのかはよく分からない(Web2.0的なものが将来主流を占めるのか?みたいな問題とも重なってくると思う)。
- リーダーを攻撃するいじめ世代のやり方であるともいえる。
2Dアニメと3Dアニメの違いについて何か
庵野秀明が「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の所信表明で「この12年間エヴァより新しいアニメはなかった」と発言していたが、どう思うか
- だから「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」に期待するかというと、そんなことはない。だいたいどの業界でも40代くらいで新しいものは作らなくなる。庵野くんはもう48才。48の男がまるきり新しいものを作るなんて恐ろしいこと(笑)。
- この業界では手塚治虫が死ぬまで新しいことをやり続けたものだから、大変なことになった(笑)。
自分史上の自慢ベスト3を教えて!
- SF大会を開催した時、会場内だけで使える通貨を用意した。この会場は地球ではなく異星ですよという設定の為に作ったのだが、当初皆に大反対された。まず通貨を用意するのに金がかかる。両替を素人がやると危険なので、第一勧銀の職員をスタッフとして雇ったのだがそれにもコストがかかる。だけど、SF大会参加者はマニア。絶対に参加記念として会場内通貨を一揃い使わずに持って帰るだろうと予想した。その分だけ儲けになるので絶対にペイする筈だ。応二本円も使えるということにしたけれど、その時は「えー!使えますけど……」と、なるべく嫌な顔をするようにという指示さえ出した。その甲斐あってか、実際に採算がとれました(笑)。
- 離婚した時。色々と考えに考えた挙句、「家族にとって自分はいらない」という結論に達した(ここいら辺は「フロン」に詳しい)。その時、40分くらい何も喋れなかった。無いと思っていたが、自分にも家長としての自負が少しはあったのかも。でも、それを振り切ってきちんと離婚した俺は偉い(笑)。
- 将来のためにとっておきます(笑)。今でも去年より今年の方が楽しいもので。
マンガ夜話で採り上げたい作品は?
- うーん。マンガ夜話かー。アニメ夜話ならすぐ挙げられるんだけれど。アニメ夜話なら今川泰宏監督版「鉄人28号」。「ジャイアントロボ」をやろうかという話はあるのだけれど、悪口いっぱい言うぞ!といっている。
- うーん。「ハンター×ハンター」は駄目と言われているから……あくまで僕の勝手な希望なのだけれど、モーニングで連載されている「ひまわりっ」か「僕の小規模な生活」かな(そういや「僕の小規模な生活」は島本和彦も気になると言っていたので読んでみたのだが、最高に面白かった。でも、島本和彦も言っていたが、人気が出てきて作者が調子にのるとマンガが面白くなくなるんじゃないか?というジレンマ)。
- 一番やりたくないのは「ぼく、オタリーマン」(笑)。
ひまわりっ~健一レジェンド~ 1 (1) (モーニングKC)
東村 アキコ
僕の小規模な生活 1 (1) (モーニングKC)
福満 しげゆき
今度オタク系のイベントをやるんですが何かアドバイスを
- イベントか。今からとても良い話をしてあげよう(笑)。イベントでもなんでもそうだが、「成功の法則」というものは無い。成功の本質は偶然である。もし法則があるのなら、成功した人の周囲にいて成功の過程をつぶさにみてきた人たちも絶対に成功するはず。でも、そんなことはない。
- 唯一法則があるとすれば、失敗しても被害の少ない方法をとるということ。そして、できるだけ沢山のことをやる。イベントなら、すべてをかけてたった一回のイベントをやるんじゃなくて、気楽にできるイベントを年に30回ずつやる。
- 中ぐらいの成功を繰り返すうちに、段々と経験値が上がってくる。凄い小規模なイベントでも、毎回10%ずつコストを減らすというような努力をし続けていけば、かなりのものが得られるだろう。
- チャレンジの数を増やすということくらいしか「成功の法則」はない。
もう作品を作る気はないの?
- 評論じゃないもの、という意味だよね?そうですね、ずっとノンフィクションを書いてきたので、そろそろフィクションを書いても良いかなという思いはある。
- つい三ヶ月前まではミュージカルを作ろうと思っていた。サイフが喋りだして、もっと金が入るサイフを連れてくる、みたいなやつ(うろ覚え)。
- でも、下手に収入があると何もものを作らないという庵野秀明現象が(笑)。
以上、他にも質問はあったのだが、私が面白いと感じた所を中心まとめてみた。質問の内容はうろ覚えなところも多く、「おれ実際に質問したけどこんな内容じゃないよ!」という人は笑って許して欲しい。
全体的な感想はその1の冒頭に書いた通りなのだがその他として、学園祭ということで大学生が多いかなと思っていたら、会場となった講堂の最前列から3列目くらいまではどうみても学生じゃないだろうという感じの人が多く、ロフトプラスワンで姿をみかけた人たちもおり、「おれはひとりじゃないんだ!」と思った。
ただ、やっぱり多摩美の学生もそれなりにいるのか、学園祭の疲れが出てるのか、岡田が話している途中に船を漕ぐ若者が多数いたのには驚いた。いや、ロフトプラスワンじゃ11時になっても目をギラギラさせて話に聞き入ってる人達ばかりだったもので。
でも、そんな彼らも、合間合間に笑いを入れたり、映像で注意を惹きつけられたりと、プチクリ話が佳境に差し掛かると目を覚まして熱心に聞き入っており、いつもながらに岡田斗司夫の喋くりテクニックは流石だなぁと感じた。毎週大学で講義をしてるとこういう講義スタイルでの話し方も上達するんだろうなぁ。
次回も同種のイベントがあったら是非参加してみたい。ただ、非学生の参加者のほとんどが感じていると思うのだが、「寝言」の二回目以降はやらないのかな?忙しいんだろうなぁ。