社会全部、崩壊すればいいんです!:『マンガ夜話』と未公開映画について

BSマンガ夜話』、今回もとても面白かった。この番組の魅力は、決して馴れ合わないレギュラー陣による緊張感溢れるトークにあると思うのだが、こういうのが観れる番組って、今ではもうこれと「朝まで生テレビ」くらいになってしまったな。


が、この『BSマンガ夜話』、岡田斗司夫Youtubeにアップした動画によると、少なくとも一年間の休みに入るらしい。



マンガ夜話だけではない。『ネットスター』『アニメギガ』『マンガノゲンバ』といったサブカル番組も削減の対象になるそうだ。あー、自分がBSで観ていた番組ばかりだな。特に『ネットスター』は、岡田斗司夫東浩紀が共演するならこれしかない!と思ってたんだがなぁ。『マンガノゲンバ』の大島麻衣や、『アニメギガ』の村井美樹みたいな美女がマンガやアニメについて意外に熱く語るさまや、キャイ〜ン天野ひろゆきが尊敬する車田正美永井豪に会って、小躍りしながら喜ぶような場面が観れなくなってしまうのか……。


岡田斗司夫によれば、サブカル番組が減る理由は以下の二点らしい。

  1. BSの局数が減る
  2. 上層部の方針が大幅に変わり、来期はサブカルチャーよりもメインカルチャーや報道に力を入れることにした

「なんで休止するんですか!」という抗議の電話は逆効果なので、メールやDVD購入といった数字として結果が表れて上層部に届くような形でのメッセージを伝えよう!と岡田斗司夫は訴えていた。詳しくは動画を参照。



だけど、いしかわじゅんはちょっとニュアンスの異なる書き方をしているんだよね。

マンガ夜話」が来期は当分できないだろうというのは、
NHKの偉い人で、サブカル嫌いの人がいるからのようだ。
日本の漫画やアニメは世界で非常に評価されていて、人気も高い。
フランスで講演した時には、観客のフランス人の女の子に、
日本でデビューするにはどうすればいいかと聞かれて驚いたが、
それだってもうずいぶん前のこと。
今は、日本漫画とアニメは、ジャパンクールの代表、
日本が輸出できる最も優秀な文化であり、産業だ。
そのお膝元の日本の総務省が所管する特殊法人NHKで、
ひとりの愚かなサブカル嫌いのおかげで、
来期はどうやらBSから漫画やアニメ系の番組がかなり姿を消してしまうことになる模様だ。
おかしな話だよな。

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これを読むと、上層部全体の方針というよりも、上層部にサブカル大嫌いな人が一人いて、その人の意向によりサブカル系の番組が削減されてしまうように読める。本当にそんなことあるのだろうか?


これを読んで思い出したのは、数週間前の『キラ☆キラ』における町山智浩ポッドキャストだ。

(『ザ・ハングオーバー』が日本公開されないことに関して)
だからアメリカで大・大・大・大・大・大ヒットしたにも関わらず、日本ではDVDスルーということで、それでまぁ、劇場でかけてほしいと皆騒いでいるという状態ですけど、これは無理でしょう!
僕、今『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』という、MXテレビでやっている番組でも同じ問題に直面していまして、大手映画会社ですね、ワーナー、フォックス……皆そうですけど、そういうところが最初の段階で劇場公開しないと決めたら、劇場公開しないです、これ!
そういうものに一杯ひっかかっていて、僕すごくたくさん大手が持っているドキュメンタリー映画で、MXテレビで放送した映画たくさん持っているんですけど、交渉しても全部駄目です!


絶対駄目ですね!


これは要するに、でっかい会社のトップが「おれがこれは上映しない方が儲かると決めた」。そう決めたら、その人の決定を覆すことができないからです。どうしてかというと、その人のミスになっちゃうからです。
どこの会社も皆同じ。えらい人が、トップが決めたら絶対に覆らないです!僕はそれで単行本が講談社から出ませんでした(笑)。
馬鹿なオヤジが、商売とか作品の良し悪しとか分からない奴らが、それまでのデータつまり過去のデータ、マーケティングだけで決定をすると。一回決定すると、もう周りが大ヒットしようが皆が求めようが、絶対に公開されないし単行本も出ないんです!それは、その人のミスになっちゃうからです、もしそれで出たら。あの人は世の中の動きが分からなかったということで、その人のミスになるから絶対にしません!そういうものです!役所と同じ、会社は!
これ、もし成功させるんだったら、DVDを皆で当てて、大人気のカルト映画になれば、「あの人は上映禁止にしたけれどもDVDでこんなに有名になって、カルト映画になったじゃないか!」ということで、ひそかに彼が恥をかくでしょう。もう、これしか方法ないんです。
もう一杯色々な映画、「ナポレオン・ダイナマイト」とか色々な映画がこういう目に遭いました。で、「ホテルルワンダ」とかが上映できたというのは、あれは事情が違って、どこの映画会社も手をつけてなかったんで、決定する上司そのものがいなかったからです。宙に浮いていた一匹狼状態だったからです。そういうのがあるからなんです。
もう、本当にこれで苦労しています、今。メッチャクチャです!


もう、そんな世の中ですよ!どこもかしこも、アメリカも皆そうです。ハリウッドの映画会社とか皆そうですよ。上の方が「この映画作る」と決めて、その映画作りはじめると、その上の方が変わっちゃうと、新しい人が入ってくると、その映画途中で作っていても棄てちゃうんですよ。どうしてかというと、その映画が大ヒットしたら前の人の、OKサイン出した人の手柄になっちゃうから、潰すんですよ、新しくサインした人は。
みんな、クズばっかりです、世の中は!これからサバイバルで、本当に人を喜ばせる人だけが生きてく世の中になればいいんです!社会全部、崩壊すればいいんです!

TBS RADIO 2009年12月11日(金) 映画評論家・町山智浩さん - 小島慶子 キラ☆キラ


NHKと映画会社という違いはあれど、上記は同じ問題について話しているように思える。


ちょっと思ったのは、「悪」とは何か?みたいなことだ。
私はマンガやアニメや映画が大好きだ。だから、それらが観れなくなるような行為は「悪」と受け止めてしまう。
で、そういう「悪」というのは、もの凄い悪人が一人いて、全部その人のせいなのかね?それとも、村上春樹のいうところの「壁」のようなものがあって、そこから「悪」が来るものなのかね?どちらかといえば、いしかわじゅん町山智浩は前者、岡田斗司夫は後者のニュアンスが強い。


ちょっと面白かったのは、「皆、落ち着け」と言っている岡田斗司夫も、「社会全部、崩壊すればいいんです!」と言っている町山智浩も、現状を変える為の手段としてDVD購入を薦めていることだ。かわいいは正義!じゃなかったDVDは正義!


バス男 [DVD]
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