今年買っておきたい1〜3冊で完結する漫画ベストテン2009

なんかもう年末年始という意識がないのだが、気にせず更新だ。


嫁と子供も無事に帰省し、テレビに映画にゲームに邁進しようと考えた正月休みなのだが、テレビの横を観れば積読された本やら雑誌やらが一杯だ。
それらを消化しつつ思ったのだが、なんか今年は「これ、今買っとかなきゃ◯年後には読めないよ!」みたいな勢いで買った漫画がとても多かった。
それは、プレミアつきそうという意味以外に、今こういう形で著者なりなんなりにしっかり金を払っておかないと不味いんじゃないか、と思ったからだ 。なんというか、「このマンガが凄い!」の一位にワンピースなんて意味あんのか!ということで。

1、『フロムヘル』、『トップ10』等のアランムーア邦訳作品全部

フロム・ヘル 上
エディ・キャンベル
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トップ10 (AMERICA’S BEST COMICS)
ヤスダ シゲル
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WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)
デイブ・ギボンズ
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いきなりルール違反かもしれないが、おそらく劇場版『ウォッチメン』と原作再邦訳の勢いに伴って邦訳されたと思しきアランムーア原作アメコミの数々。はっきりいって、『ウォッチメン』映画化と同じくらい嬉しかった。
特に『フロムヘル』は、その分量と内容*1から、まさか邦訳が出るとは思っていなかったのだが、嬉しい驚きだった。そういえば柳下毅一郎は最初のダークナイトの邦訳も担当していたな。
この勢いで来年は『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』の『THE BLACK DOSSIER』や第三部の邦訳をお願いしたい。

2、ピコピコ少年

ピコピコ少年
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最早、ゲーム雑誌であったことなど誰もが忘れた「CONTINUE」誌にて連載された、かつてのゲーム少年の思い出漫画。
少年時代のゲームに関する思い出話といえば、ゲームを介して新しい友人ができたとか、女子や大人と接点ができたみたいな「いい話」が定番なのだが、そういったものに180度背を向けた少年ゲーマーの狂気やダークサイドを主題とした点が素晴らしい。

3、8bit年代記

8bit年代記 (GameSide Books) (GAME SIDE BOOKS)
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セガガガ』や『サンダーフォースVI』等の俺ジナルな世界観構築で、良い意味でも悪い意味でも名を馳せたゲームクリエイターゾルゲ市蔵。彼が自身のゲームとアニメに打ち込んだ小中高時代を題材にした漫画。
掲載誌、作風、年代、形式と、全てにおいて『ピコピコ少年』と対象的ながらも、底に流れる狂気のみは共通するという、出色の一冊。
特に、高校美術部にて、親や仲間のみならず、自分自身をも騙しつつアニメ製作に打ち込むエピソードが素晴らしい。
それに気づく契機が『オネアミスの翼』というのも、なんともまた。

4、猫背を伸ばして

猫背を伸ばして(GAコミックス)
476633471X
押切連介作品が続くが、ジャンルとしてのホラー系以外での魅力が露わになった年だと思うので。
今流行りの漫画家漫画といえばそれまでなのだが、「世界」に対する違和感や嫌悪感といったものが押切にしかできない方法で表現された傑作だと思う。
特に、ディスカウント店でのバイト話と漫画家仲間との「街探検」、というか散歩話がいい。ただ、過去と現在の作画の書き分けがあんまり効果的じゃないのが残念。

5、ねこぢる大全

ねこぢる大全 上
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ねこぢる大全 下
4163706909
90年代、最も重要な漫画家はねこぢるであると考えるのだが、彼女の全作品が二冊にまとまってこの値段!『ぢるぢる旅行記』も全部読めるぞ!
不用意にも剝き出しのなにかに触れてしまったかのようなドキドキ感が本当に最高。そういうのは、特に初期作品に顕著なのだが、こなれた中にも時折ドキッとする描写が光る後期作品も良い。
ただ、「ユダヤの豚」等の台詞改変がそのままだったり、「いぬごろしの巻」が未収録なのは残念。資料性を考えて原版のままとして欲しかったところ。


6、パチ漫三国志 ~かわかずお作品集Part.2
パチ漫三国志 ~かわかずお作品集Part.2
4862484158
どんな漫画家のタッチも真似できるという、田中圭一を超える超絶漫画家まさかの二冊目。横山光輝のタッチで『風俗三国志』、安野モヨコの絵柄で『エヴァンゲリオン』、ガモウひろしの絵柄で『デスノート』と、今回も大爆笑。単なるネタや悪ふざけを通り越して、ある種の批評性までをも感じるというのは言い過ぎか。


7、性本能と水爆戦シリーズ
最後の性本能と水爆戦 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
486269067X
性本能と水爆戦 征服 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
4862690858
世の中には大きく分けて二種類のエロマンガが存在するという。ヌケるんだけど漫画的にあんまり面白くないエロマンガ、面白いのだけれど全然ヌケないエロマンガ。だが、実用性と面白さを兼ね備えた作品も少数ながら確実に存在していて、道満晴明の漫画はその最たるものだと思う。
同じような位置にいた*2Okama平野耕太が全くエロ漫画を書かなくなったことと比べると、未だにエロにこだわっていてくれているのも嬉しい。昔の作品と比べると、絵柄もページ数も洗練されてきたさまも確認できる。
新作としては『最後の〜』のみなのだが、復刊されてお求め易くなったということで。


8、ワイルド・ナイツ
ワイルド・ナイツ 1 (アクションコミックス)
4575942162
ワイルド・ナイツ 2 (アクションコミックス)
4575942170
ボンクラ男子がアイデンティティ獲得の為に体を鍛えてヤンキー狩り、というのはよくあるプロットだと思うのだが、地方都市に棲むメガネ男子の暴力とセックスに、尋常でないワクワク感を感じる作品。
これまで童貞少年の濁った青春ライフを書いてきた古泉智浩が、最早童貞でも少年でもない30過ぎのフリーターを主人公に、自身のリアルライフを赤裸々に反映させたであろう点に注目したい。ラストには確かに驚愕した。


9、さべちん
さべちん (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
486269103X
今年の1月に早逝したSABEの未単行本化作品を集めた追悼本。
デビュー直後から亡くなる直前までと、長いスパンに渡っての作品群が納められているのだが、どれもブルマにウンコにペンギン惨殺と、はっきりいって狂っている。だが、年月を経ると共に、その狂いようが上手く作品という形に結実していくさまをみてとれるのが面白い。初めて単行本としてまとまった『ゆらさん日記』にて、SABE本人が愛娘ゆらさんや南Q太と共に描写されるコマには、なんともいえない気持ちになった。


10、今年復刊したり文庫化されたりした桜玉吉作品全部
4コマ漫玉日記 酸 (BEAM COMIX)
4047262250
4コマ漫玉日記 アルカリ (BEAM COMIX)
4047262269
桜玉吉の長い休暇を買い支えて、いつの日か新作を書いてもらうのがファンとしての使命なんだよ!
ファミ通に載った「餓死しそう」という4コママンガには驚いた。『4コマ漫玉日記』には一応新作も収められているので、既読の方にもお薦め。


というわけで、本当に独断と偏見に満ちた漫画ベストテン。
社会人にも関わらず不用意にも親や親戚からお年玉を貰ってしまったそこのキミ!つっ返す前にAmazonで買物でもどうかね?

*1:危なさというよりも完全なる翻訳に必要な知識を持った人間がいるのか問題

*2:あくまでもオレ番付