キャット&チョコレート エロ同人誌編をやってみた

「キャット&チョコレート」というカードゲームをご存知だろうか。「迫りくるピンチを限られたアイテムを使って回避するゲームです」などと公式サイトには書かれているが、実際にはえげつないほどの想像力とプレゼンテーション能力が試されるカードゲームの名作だ。
キャット&チョコレート
B003S9XD0Y
「キャット&チョコレート」にはオリジンである「幽霊屋敷編」に加えて「ビジネス編」「学園編」などが発売されているのだが、ルールは全く一緒で、主に「イベント・カード」と「アイテム・カード」という二種類のカードを用いて遊ぶことになる。
たとえばビジネス編なら、イベント・カードには「外資系ファンドに会社を乗っとられそうだ」とか「満員電車で手首をつかまれた。このままでは痴漢の現行犯で捕まる」みたいなアクシデントのシチュエーションが書いてある。一方、アイテム・カードには「バナナ」とか「契約書」とか「名古屋コーチン」とかいった、その名の通りアイテムの画と名前が書いてあるわけだ。
キャット&チョコレート/ビジネス編
B004EBU4HK
キャット&チョコレート/学園編
B00COZKTGO
順にアクシデント・カードを引き、アイテム・カード1〜3枚を使って「どういうふうにアクシデントを回避したか」をプレゼンする。ここが難しい。たとえば、「外資系ファンドに会社を乗っとられそうだ」というアクシデントに対し、「外資系ファンドの役員を、バナナの皮ですっころばしたところで助けて恩を売り、名古屋コーチン鍋の店で接待した後、株式買い占め中止の契約書にサインを押させる」みたいなストーリーを作って、プレゼンするわけだが、アイテムカードの組み合わせによってはウルトラC級の発想力と、エスキモーに氷を売り込むレベルのプレゼン能力が求められるのだ。
で、当人のプレゼンにその場にいるプレイヤーの過半数が納得したら1ポイント獲得、最終的に獲得ポイントが多かったプレイヤーの勝ち――というゲームだ。
(上記に加えて、「専務派」「社長派」の2グループに分かれて総合ポイントを競うという「人狼」ライクなルールもあるのだが、これはあんまり活かされていない)


プレイヤーにはストーリーを作る発想力の他に、周囲を納得させるプレゼン力――面白く喋ってウケをとるトーク力、他プレイヤーのツッコミにうまく返すアドリブ力などが求められることになる。「コミュニケーション能力とは具体的に何か?」みたいな言説があるが、発想力とコミュニケーション能力(の一部)の双方が鍛えられる、実によくできたゲームだ。
更に、実際にプレイする際は、プレイヤー間の関係性も重要になる。初対面の人が多い場合は遠慮会釈なくツッコめなかったり、とんでもない発想をプレゼンし難かったりして、つまらないプレイになることもある。一方で、その場の空気を読んだ真っ当な回答だけでなく、珍回答や迷回答を捻り出せる人は一躍その場のスターになる。テーブルトークRPGにも似た楽しさのあるゲームだ。


前置きが長くなったのだが、本題はここからだ。
今年の5月、『まどマギ』でおなじみエロゲー&アニメ脚本家 虚淵玄が新しいバージョンの「キャット&チョコレート」を提唱した。
その名も「キャット&チョコレート エロ同人誌編」だ。


キャット&チョコレートエロ同人誌編 - Togetter


まず、イベント・カードの代わりに、アニメや漫画の女性キャラクターの名前を書いた「キャラ・カード」を用意する。「綾波レイ」とか「惣流・アスカ・ラングレー」、「2199版森雪」とか書くわけだ。アイテム・カードは既存のものと同じだ。
そして、山からキャラ・カードを引き、思いつく限りのエロ同人マンガのストーリーをプレゼンするわけだ。
名古屋コーチンの細胞を使って作った綾波レイのクローンが、契約書で脅されて、○○○にバナナを突っ込まれて……ひ、ひぎぃぃぃ!」
みたいなのをプレゼンするわけだよ!!


先日、オタク友達が5人も集まる機会があり、実際にやってみることにした。
まず、100円ショップで購入した白紙カードに、各自好きな女性キャラクターを書く。今回は1人5枚ずつとした。

「チュン・リー」「003」「モモレンジャー」……何故かアスカは大人気で、6名中3名が重複して「アスカ」を書いたりしていた。エロ同人誌といえばアスカか綾波、もしくはモグ波! という世代があるんだなぁ。誰だ、「カツマカズヨ」なんて書いたのは。「ムーミンママ」や「黒柳徹子」もハードルが高そうだ。
裏面には1〜3までの数字をランダムに書く。これが使わなくてはならないアイテム・カードの枚数になるわけだ。


準備が整ったので、いよいよプレイしてみる。


たとえば、とあるターンはこんな感じ。

キャラ・カードは「サザエさん」。アイテム・カードは「整髪料」「契約書」「DVD」。これでエロ話を作るわけだ。いきなりハードルが高い。

  • サザエさんは人妻
  • 契約書で脅される
  • 盗撮DVD
  • 整髪料がワセリン代わり

……等々、様々な妄想を膨らませ、それを一本のストーリーにするわけだ。む、難しい……。「やおい」の語源が「ストーリーに山場、オチ、意味が無い」であることは有名だが、本当に山場もオチも意味も無いストーリーをべしゃりで説明するのって難しいんだよね。どうしてもオチをつけたくなる。

実は万引き癖のあるサザエさん。ある日、匿名のDVDが送られてくる。マスオさんとタラちゃんが寝静まった後で観てみると、そこにはスーパーで万引きする自身の姿が写っていた。添付されていた手紙に従い、スーパーの事務室に赴くサザエさん。下品で屈強な店長から脅され、一枚また一枚と服を脱いでいく。店長の浅黒い腕がサザエさんの豊満な胸をもみしだく。そして、もう片方の手には何故か整髪量が。「ふふふふ、奥さん。アナルは好きかね?」いつしかサザエはお団子ヘアーをほどき、一人の女に戻るのであった……

……みたいなストーリーをなんとかひねり出し、プレゼン……というかエロ話を披露してみた。これは大変だわー。


で、プレイヤーの過半数が納得……ならぬ興奮したらポイント獲得だ。
虚淵先生は”「勃った」「萎えた」の判定カードでジャッジ”と書いてるが、やはりここは「サムズアップ」「サムズダウン」でジャッジしたいところだ。

サムズアップ

サムズダウン


この親指が何の隠喩であるかはわざわざ書くまでもないよな!


こんな感じでゲームを進めていく。



こちらは「綾波レイ」と「ラブレター」「参考書」「高い酒」。
どう考えても、ラブレターで綾波レイを呼び出した後、酒で酔わせてレイプするしかない。



こちらは「和田アキ子」「FAXつき複合機」「コーヒー」。
まず「和田アキ子」という時点で無理ゲーな気がするが、若い頃の和田アキ子を想像して……
女番長・野良猫ロック [DVD]
B000ICLNUG
いや、ちょっと無理だな。



そんなわけで、野郎6人、楽しい時間を過ごすことができた。
実際やってみて分かったのは、アイテム・カードをどうエロ話に絡めるかが重要ということだった。ついついシチュエーションの設定に使いがちなのだけど、、それだとあんまりエロくならないんだよね。
たとえば「雑誌」だったら、「雑誌の読者モデル撮影会に呼ばれて」よりも、「口に丸めた雑誌を突っ込まれて……」の方が盛り上がるわけです。『エイリアン』が盛り上るわけだ!
上記は発想面での注意点だが、プレゼン面での注意点としては、擬音や擬声語や台詞の的確な使用が挙げられる。「ぬぷぬぷ」、「てらてら」、「ひ、ひぎぃぃ」、「ら、らめぇぇ」みたいなのをここぞという場所で的確に使用すると、途端にエロさと面白さが倍増するんだよね。やはり、みさくらなんこつは偉大だ。声に出して読みたいみさくら語、というわけだ。
また、面白かったのは、恥ずかしいのか、プレゼンの時にリア充さんが小さい声になる人がいたことだ。こんなゲームに参加を決めたくせに恥ずかしいだなんて! ムッツリだなぁ。
また、世代差がある場合、「『ソード・アートオンライン』のアスナ」とか「『東方』の○○」といったキャラを、もうアニメを観なくなったおっさんオタが引いてしまったり、逆に「南原ちずる」「イムホフ・カーシャ」を若アニオタがひいてしまうなんて事態が発生してしまう可能性もある。その場合、自分が知らないキャラ・カードを引いてしまった場合は、パスしたりもう一枚引いたりできるというローカル・ルールを設けるといいだろう。


で、もし可能ならこのゲーム、もうちょっと改変した後、実際に商品化して、コミケなんかで誰か発売してくれないかなぁ。
・画が重要なので、きちんとしたエロ同人漫画家にこれ以上ないというくらいのエロ画を発注する
・「電マ」「アナルプラグ」等のボーナス的(エロ話を作りやすい)なアイテム・カードを数点加える
これだけできちんとした商品になるんじゃないかと思う。


感覚としては、十数年前に発売されていた町野変丸のカルタみたいなものになるかと思う。
町野変丸 サブカルター|赤札天国



そんなわけで大変愉快な時間を過ごしたのだが、虚淵togetterでは「キャラ・カード」を二枚使用する「BL編」という禁断のプレイ方法もあるらしい……。

おそろしい。おそろしいことこの上ないわー。