このGIジョーを作ったのは誰だ!:『G.I.ジョー バック2リベンジ』

雄山「中川、今日観る映画はなんだ?」
中川「『G.I.ジョー バック2リベンジ』にござります」
雄山「ほう。アニメ『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』を実写化した『G.I.ジョー』の続編だな」
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雄山「前作はアクション映画としては微妙だったが、玩具箱をひっくり返したような幼稚なセンスが楽しい作品だったな。今回も楽しみだ」
中川「この中川、雄山さまの好みは熟知しておりますゆえ」
雄山「ハハハ、こやつめ。それでは、観てみるとするか」



二時間後



雄山「……この『G.I.ジョー』を作ったのは誰だ!」
中川「先生、どうか落ち着いてください」
「だから私はこんな下衆なシネコン映画を観るのは嫌なんだ! 人に金と時間を払わせておいて、こんなものを観せるとは!!」
雄山「監督を呼べ!」
ジョン・チュウ「わっ私です」
雄山「監督! 私が誰だか知らぬはずはあるまいな! 美食倶楽部を主宰する海原雄山と知りながらこんな映画を出したのか!」
雄山「この私も舐められたものだ!!」
中川「ひ、ひええええ」
雄山「貴様はクビだ!出て行け!」
中川「先生、チュウの至らない点はあらためさせます。どうか……」
雄山「やかましい、上手いとか下手とか以前の問題だ。こやつには『G.I.ジョー』を作る資格はない!とっとと出てうせろ!」
中川「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
中川「先生、お待ちを!」




京極「ふむ、何で海原雄山はそないに怒ったんやろ。なんぞ心当たりはないんか?」
チュウ「いえ、何も」
京極「それやったら海原雄山にだした観せたのと同じ『G.I.ジョー』をここで出してみなはれ。ワシと山岡はんやったら何か分かるやろ。なにせ山岡はんは海原雄山の息子やからな」
チュウ「え!海原先生の息子さん?」
栗田「京極さん、知ってらっしゃったんですか」
京極「山岡はん、どうやろ。海原雄山が何故駄目だししたのか知りとうないか?」
山岡「いいでしょう」
チュウ「先生の……(ガクブル) 分かりました。お観せしましょう。ちょうど内覧用サンプルDVDを持ってきていますので。ただ、公開中ですので、扱いには気をつけて下さいね」
京極「大丈夫や。ここには映画泥棒はおらへんで」
富井「DVDだとあの客を泥棒扱いするムカつく映像が無いから快適だね」



二時間後



チュウ「どうでしょう。先生にお出ししたのと同じ『G.I.ジョー バック2リベンジ』です」
富井「おお。ザ・ロックは格好いいし、ブルース・ウイリスも出てるし、面白いじゃないですか!」
京極「フム……」
栗田「面白いけど……なんだか風味が少し」
山岡「残念だけど、チュウさん、海原雄山の言うとおりだ。あんたには『G.I.ジョー』を作る資格はないよ」
チュウ「な、なんですって」
富井「山岡君、どうしてだね。こんなに面白いじゃないか」
山岡「この『G.I.ジョー』には小学生みたいな純粋な幼稚さが足りない。さてはチュウさん、あんた中二病だね。この『G.I.ジョー』はできそこないだ。食べられないよ」
京極さん「そうか、なんか気になったんやけど、この匂いは中二病の匂いか」
栗田「どおりで栗の花のような風味がすると思ったわ!」
岡星「チュウ、お前まさか中二病だったのか」
チュウ「す、すいません」
山岡「いいかい、チュウさん。一作目の『G.I.ジョー』が何故あんなにウケたのか思い出すんだ。
ストーリーの幼稚さでいえば、アイロニー無しで『チームアメリカ』をやっていると言われた一作目も、学級会みたいな核サミットが開かれるあんたの『バック2リベンジ』も、同じようなものだろう。
でも、一作目には憎めないオモチャ感があった。男の夢であるドリル戦車に、黒光りするステルスヘリ。ファイヤーフォックスみたいな戦闘機。砂漠や氷原の真下には馬鹿みたいにデカい秘密基地があって、エロい姉ちゃんと強いニンジャがいて、パワードスーツを着ればニンジャとも互角に戦える。まさに小学生の妄想そのままじゃないか。オモチャを原案としたアニメが原作だということを考えれば、実にまっとうな映画化だった」
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チュウ「うぐぐぐぐ……」
山岡「それが『バック2リベンジ』じゃどうだい? オモチャみたいな超兵器は無し。アホみたいにデカい秘密基地は無し。普通の映画にでてくる貧乏くさいアジトや、意味なく立ち上がる戦車しか出てこないじゃないか。ボディラインが強調されるエロ格好いいゴム製スーツは普通の軍服になっちまった。一作目にあった素晴らしい幼稚さがまるでない。
代わりに付け足されたのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』の10分の1くらいの迫力の特殊部隊ごっこ感や、まるで学級会みたいな政治ゲーム感だ」
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山岡「核ミサイル発射用のアタッシェケースのボタンにテプラみたいな安い素材の「発射」とか「中止」とか書いたシールが貼ってあったのには哂ったよ。エロい姉ちゃんとニンジャは生き残ったけど、それだけだ。これはまさしく中二病だね」
チュウ「むぐぐぐぐ……」
山岡「いいかい、チュウさん。あんたの『G.I.ジョー』は、小五病の良さを失って、中二病になってしまったんだ。続編が作られる度にオモチャ感や幼児性が増していった『トランスフォーマー』とはえらい違いだよ。
チュウ「ぐむむむむむ……」
山岡「俺の知り合いの劇画原作者の子供が、中学生になった途端「もう中学生だからスーパー戦隊なんて観ない! ライダーだけ観る!」とドヤ顔で宣言したそうだが、あんたはその中学生と同じだと思わないかい? 雰囲気だけで面白さを判断してるんだ」
チュウ「グワババババ……」
岡星「チュウ。言われっぱなしで良いのか」
山岡「そうよ、チュウさん。悔しかったら、戦車が変形してロボットになるような、幼稚な映画を作るのよ」
京極「そうやで、チュウさん。皆はイ・ビョンホンの乳首じゃなくて、エロい姉ちゃんの乳首がみたいんやで」
チュウ「うううう……俺だって、俺だって、本当はファイアフライをニンジャのままにしたかったんだ。エイドリアンヌ・パリッキやエロディ・ユンにゲロ吐かせたかったんだ……。でも、スタジオがこれじゃなきゃ売れないっていうから。3D編集に一年もかけちゃったから……」
栗田「どおりで。だからブルース・ウイリスの昔の仲間が台詞だけでしか登場しなかったり、ラストのアクションがなんだかガチャガチャしていたのね」
京極「編集しすぎや。時間がありすぎるのも考えものやな」
富井「サラリーマンの出世の秘訣はゴマスリだよ」
チュウ「うううううう……」