岸辺の携帯

例年この時期はなにかと忙しく、ブログを書く時間も無い……筈なのだが、最近携帯電話でブログ用の文章を書くという小技を覚えた。これがなかなか良い。パソコンのキーボードに比べると携帯のキーは遥かに小さく、時間がかかるのだが、自分の場合、逆にそれが良い場合もあるようだ。


一昔前ならいざ知らず、今や珍しくもなんともないと思うのだが、一応私も頭に字が思い浮かぶのと同じ速さで文章を打てるわけだ。でも、人に読んでもらう文章を書くというか生成する上で、それが良いとは必ずしもいえないのだな。頭から文章が噴出するように湧き出て湧き出て困ってしまう、というような場合は良いよ。でも、考え考え、推敲しながら書く場合、インターフェイスの良さは必ずしも利点とならない。つっかかるように書くことで、不可抗力的に推敲する時間が増え、心の中で対象と向き合う時間が増え、思いもよらない観点に気づくこともままある。私にとって、小さい携帯電話のキーで苦労しながら文章を打つというのはそういう側面もあったのだな。まぁ、時間に余裕がある時しかやらないけれど。


そんなわけで、この前都内に出た時も携帯でシコシコとプリキュアのことなぞ打っていたのだが、家メールに送信後、普段ならバックパックのポケットに入れるところを、何の気無しにポケットにしまいこんだんだよね。
で、翌日。我が家では嫁が洗濯機回し担当、私が洗濯物を干す担当なのだが、ズボンを干していたらゴロンと見覚えのあるものが床に転がり落ちた。……私の携帯だ。うへぇ。


慌てて電源ボタンを押すも、勿論起動しない。我が家には洗濯前にポケットに物が入ってるかどうかチェックする習慣が無い*1ので、嫁に文句をいっても始まらない。携帯を洗濯して水没させてしまうなんて、学生の頃以来だ。確かあの時は、翌日沖縄に旅行に行くので慌てて洗濯していたのが不味かったんだよな。今回は、メール打ちに熱中していたのが原因か。いやー、トラブルというものは、普段の生活パターンと違うことをする時に起こるもんなんですな。


普段なら俺様ちゃんのバカバカバカバカ!と落ち込むところだが、まぁ、数年間使い込んだ機種だし、最近電池の持ちも悪くなってきたことだし、機種変更する良い機会だとポジティブに考えることにした。兼ねてより興味のあったiPhoneに機種変しのだが、良いねiPhone!こんなに使えるデジガジェだったとは!メモ機能も適度に使いやすく、かつ適度に使いにくい。もっと早くゲットしとけば良かったよ。


ただ、機種変の原因は携帯水没なので、電話帳はまっさらだ。どうにかしてデータをサルベージできないものかと色々と調べてみると、どうもエタノールの脱水作用を利用する方法があるらしい。


No Mobile, No Life.: 携帯電話を水没させたら?


私もやってみた。方法はこうだ。
まず、携帯電話のバッテリーを抜き取り、ジップロックに入れる。
エタノールを入れ、シェイクする。

そして、ドライヤーの風で乾かす。熱で基盤が損傷する可能性があるので、温風にはしない。
で、完全に乾いたら電源を入れるのだが……私が使用していたpremini-Sは隙間の少ない内部構造を持っているのか、幾らドライヤーの風を当てても液晶内部に入り込んだエタノールが乾かなかった。
仕方が無いので一昼夜放置し、翌日帰宅してから電源を入れてみると……



見事復活。やったぜ!


常温において、エタノールは水よりも極性が少ない。なので、水が「溶ける」。でも、蛋白質*2核酸は溶けない。水和水を奪うということなのだが、これを利用して、細胞をプレパラートに固定したり、DNAから水分を抜いて沈殿させたりする。後者を「エタ沈」なんて略したりする。同様の原理で、携帯電話の基板上から水を奪うわけだな。
原理的に言えば、より極性の少ないイソプロパノールの方が脱水作用に優れており、「エタ沈」もエタノールに比べてだいたい半分の量で済んだりする。しかも、酒税がつかないので安い。基盤を痛めるということが無ければ、イソプロパノールを使った方がお勧めかもしれないな。


ここですかさずDocomoかソフトバックショップに持ち込んでデータをサルベージしたいところなのだが、平日は仕事があるので無理だったりする。勿論、パソコンとケーブルで繋いでデータを吸い出すキットみたいな、気の利いたものは持ってない。



そこで、一生懸命ノートに書き写している最中です。ノート最強!最強のデジタルガジェットは携帯でもiPhoneでもなく、ノートだぜ!これなら水没しても大丈夫!

*1:子供がいて洗濯物が多い家は皆そうだと思う

*2:低濃度の場合。高濃度だと変性する