モーレツ!オモチャ帝国の逆襲:「フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい」

というわけで、今回も男二人で「フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?」を観にいったぜ!
今回は息子が三歳になっていたこともあり、きっちり幼児料金を払ったせいか、きっちりミラクルライトをゲット。前回は子供が目の前にいたにも関わらず「大人券一枚じゃ差し上げられません」と冷酷なワーナーマイカルに言い放たれたので、ちょっと嬉しい。


で、このミラクルライト、真っ暗な映画館でライトを点灯させるという、冷静に考えると鑑賞中に携帯電話でメール確認と同じくらい迷惑な行為なのだが、文句を言う客は誰一人いない。それは、単に小さな子供達に映画を観てもらうだけじゃなくて、積極的に参加して貰おう!という作り手の意志を皆が理解しているからだと思う。
だが、私のような大人の目から見ると、過去の劇場版において、この「観客参加」が、上手く機能しているとは思えなかった。プリキュアの映画はどれも強いラスボスを倒してバンザイ!みたいなプロットなのだが、なんか、ここで倒せないのは作り手のさじ加減一つで、ラストにミラクルライト振らせたいからだろ!とか思ってしまうんだよな。


でも、今回の「おもちゃの国は秘密がいっぱい!?」はちょっと上手かったよ。気にする人はあんまり居ないかもしれないけど、以下ネタバレを交えつつ私の考えを解説しよう。



今回の敵「トイマジン」は、人間に棄てられたことに恨みを持つオモチャという、「トイストーリー」の続編にでも出てきそうなキャラだ。彼は別世界である「おもちゃの国」に棲み、人間界のオモチャを消去することで復讐を果たそうとする。
でも、プリキュアの4人は健全な中学生女子なので、オモチャが消えても無問題なわけですよ。そりゃそうだ。早くオトナになりたい最近の中学生女子の関心事といえば、恋に洋服に化粧にスイーツ(笑)なわけで、いい年こいてるにも関わらずオモチャで遊びまくるのはどちらかといえば男の方だ。だから、オモチャが無くなって泣きじゃくる子供達と、楽しそうにパジャマパーティをするプリキュア達の姿がカットバックで描かれたりする。
しかし、だからこそプリキュアは、「オモチャである俺を棄てた子供達に復讐してやる!」と呪詛の言葉を叫びつつ向かってくるトイマジンを、倒すことはできても救うことはできない。アメリカという国が、タリバンという組織を倒すことはできても救うことはできないのと同じだ。彼女達はオモチャを棄て、オトナへの道を歩もうとしてるのだから。


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つまりこの映画は、「トイストーリー2」が持っていた主題を、全く逆の構造で描いているのだ。「トイストーリー2」では、主人の成長と共に飽きられ棄てられることを想定しつつも、「運命の日」まで精一杯楽しい思い出を作ってゆこうというオモチャ達の覚悟が描かれた。対して「おもちゃの国は秘密がいっぱい!?」では、かつて棄てたオモチャ達に批判され糾弾され責任を追求される子供でもオトナでもない存在、少女達の戸惑いが描かれるのだ。真相を知り、「私もオモチャを棄てちゃった……」と戦意を喪失する主人公ラブに対し、最もオトナっぽいプリキュアであるキュアベリーが放つ台詞は象徴的だ。


「しっかりしなさい!貴女は桃園ラブではなくてプリキュアなのよ!」


プリキュア」というアニメにとって、「プリキュアに変身する」という行為は「ガンダム」におけるMSへの搭乗とほとんど同じ意味を持つ。すなわち成長と、社会へのコミットだ*1。つまりキュアベリーは、オモチャになぞ心乱していては成長出来ない、そもそももはや子供ではない自分たちに棄てられたオモチャを救う資格も能力も無い、と言っているのだ。


ならば、救えるのは誰か?それは心の底からオモチャを愛している現役の子供だけだ。しかし、ここは「おもちゃの国」という異世界なので、子供はいない。いや、いる。


それはスクリーンの前にいる君達だ!だからミラクルライトを振って、プリキュア達を助けてあげて!
……という流れに、本当に本当に興奮した。ピクサーが逆立しても出来ない現実世界から物語世界へのコミットを、東映動画じゃないや東映アニメーションはいとも容易くやったのだ。タイムトラベルでイルカを連れてくる「スタトレ4」以上のセンスオブワンダーを感じた……というのは言い過ぎか。


……だけど、ウチの息子は、周囲が女児ばかりなせいか恥ずかしがってライトを振らないんだよね。「ちっとは人形の気持ちも考えろ!」という「イノセンス」のバトーみたいな説教をしたことは言うまでもない。


ただこの映画、プロットは完璧でも細かい所でクオリティが低い。
たとえば、中盤の双六バトルは敵がもっとオモチャオモチャしていないと。ブルースリー人形は腕や脚が外れた際に中の輪ゴムが見えて欲しいし、宇宙船はもっとレゴ宇宙シリーズみたいなヤツであるべきだし、ブッキーが恐竜と会話出来ない理由はトゲが刺さっていたからではなくて、単にオモチャだったからでないと。更にいうと、チェスってオモチャじゃないだろ!
やっぱりここは、スポンサーがバンダイなのだから、ガンプラっぽいロボットとか、ウルトラ怪獣っぽいモンスターとか、ケロン星人っぽい異星人とかであるべきだよね。版権の問題で厳しいというのなら、せめて同じ東映スーパー戦隊が乗り込むようなロボットと戦って欲しかった。そこいら辺、具体的にどこどこの商品というわけじゃ無いけれど、いかにもアメリカ人にとってのオモチャ然としていた「トイストーリー」のキャラクターメイキングは素晴らしかった。
そういう意味でのクオリティの高さでいうと、来春に予定されている「第二次スーパープリキュア大戦」に期待大か。キュアババァは俺の嫁
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*1:プリキュアの活躍がテレビで放送されるのはそういうことだろう