第二次スーパープリキュア大戦α:『プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』


ホラー映画、SF映画、サスペンス映画……。映画には様々なジャンルが存在する。
知らない人は全く知らないと思うのだが、近年新しい映画ジャンルが誕生した。「スパロボ大戦映画」がそれである。


スパロボ大戦映画」は下記のように定義される

  • 少なくとも三作以上続いている長期テレビシリーズの
  • それぞれの作品において主人公を務めるヒーロー/ヒロイン達が
  • 映画会社の資本主義的な理由で一同に介し
  • 当初は全く他人だったり、いがみ合ったり、仲間内で戦ったりするものの
  • 最後は一丸となって映画オリジナルなラスボスと戦うという
  • 旧来の「まんがまつり」とは異なるが、お祭り感は共通する映画


メリットとしては「様々な世代にとってのヒーロー/ヒロインが登場するので、確実な客入り増が見込める」の一点につきる。何年、時には何十年も前のキャラと現役のキャラが共演するので、複数の世代が楽しめるのだ。その昔、「まんがまつり」でマジンガーゲッターロボデビルマンが共闘していたが、それと現在の「スパロボ大戦映画」は似ているようで異なるのだ。
ちなみに、ここでいう「世代」とは親と子であると同時に、現役でその番組を観てる世代と数年前にターゲットであった世代を意味する。「もうカードで遊ぶ年じゃないけど、懐かしいから『10thアニバーサリー 劇場版 遊☆戯☆王』観にいこうぜ!」と高校生や大学生が劇場に足を運ぶ……というのも当然ありうる。


そんなわけで幾多の昭和ウルトラ世界と平成ウルトラ世界が融合したり、平成ライダー昭和ライダーが戦ったりしたわけだが、メリットがあれば当然デメリットもある。

  • どうしてもヒーロー/ヒロインの人数が多くなるので、キャラが被る奴等が出てくる
  • それぞれにある程度の見せ場を作る必要があるので、構成に無理が出やすい
  • 続編が作り難い


これを避ける方法としては「アメコミに学ぶ」「共演を絞る」等々があり、全部ディケイドのせいになったり、ウルトラシリーズが超伝説化したり、スーパー戦隊は二世代しか共演しなかったりする。
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というわけで前置きがたいへん長くなったのだが、『プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』観てきた。これは同じく「スパロボ大戦映画」であった『DX1』の続編に当たるのだが、この方法論で毎年作っていくのは若干厳しいなぁと感じたよ。
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というのはさ、「妖精がホストを務めるテーマパークでの戦い」とか「一つ年上であるフレッシュ勢との交流*1」とか「ゲストキャラが沢山登場」とか「ハートキャッチ組を圧倒するほど強い再生怪人軍団」とか、『DX1』と違うことをやろうという意志は感じるのだけれども、結果としてあんまり上手くいってないんだよね。
一回全員集合した後、すぐ分かれて、クライマックスに向けてまた集まるのだけど、本当に段取り感が強い。どうせ次はMax Heart組とSplash Star |組が登場するんだろ? みたいな。また、無印組が変身できるように妖精を届けるのが先なのか、それともあのハートの時計みたいなのを止めるのが先なのか、整理されてないので、折角の時限サスペンスが生きてこない。
これはそれぞれに見せ場を作らなければいけないのに圧倒的に上映時間が足りないという構造的問があるので致し方ないのだけれど、それなら『DX1』のように開き直ってバトルシーンの連続で繋いだ方がまだ潔いんじゃないかと思ったよ。
基本的に本作はお祭り映画なので、観客の心を震わせるような感動とか現実に訴えるような隠喩とかが無くても全然構わないのだけれども、観客を心の底から楽しませるフェスティバルとして、構成が悪い。
また、たとえお祭りであっても、やっぱりラスボスは単にHPが高いとかステータスが強いとかだけじゃなくて、少女がこの先の人生で出会うであろう困難とか寂しさとか何かの隠喩であって欲しかった、とも思う。前作『おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』が面白かっただけに。
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ただ、ちょっと面白かったのは、作画が圧倒的に違うハートキャッチ組とそれまでとを力技で共演させたことだ。
プリキュア」シリーズは何回か作画が変わっているのだけれど、『フレッシュ』から『ハートキャッチ』に代替わりする際、圧倒的に作画が変わったんだよね。で、それに伴って演出も変わった。「希望は決して消えない! 勇気は決して消えない! お願い、立って!」みたいな大説教大会から、「キュアブルームが落ち込んでるのに気付いたキュアマリンがそっと腕を組んで励ます」みたいな、台詞ではなく映像や動作で心情を表す演出にチェンジしたんだよね*2。映像作品として上等になったということだ。


でも、それが本作では旧来のプリキュア演出と『ハートキャッチ』での丁寧な演出との相克となっていて、当初はフレッシュ組や5組がサムズアップしたり熱い台詞を吐いたりする度にキュアマリンが「なんか違−う!」とか「あたし、何やってんだろ?」とか「プリキュア」というシリーズを解体するような台詞を吐くものの、どんどん旧プリキュアの馬鹿ムードに取り込まれていって、最後は白バックに「ハーッ!」と皆で一緒に親子かめはめ波を放って、名実共にすっかり旧プリキュアの一員になっていたのが面白かった。真相は、新しいスタッフがテレビ版に注力してる横で、旧スタッフは劇場版を作っていたってことなんだろうと邪推するのだけれど。


また、EDのCGキャラによるダンス映像は純粋に面白かったし、満足できた。これまでの各シリーズのテレビ版OPをCGで再現しつつ、PVみたいなカッテイングで繋いでいってるのだが、アイドルとかコンサートとか好きな人間が作ってるんだろうなぁ、と思ったよ。
もう一つ、三瓶由布子が舞台挨拶で「次の世代にバトンを渡せたかな……」と感極まって涙を流した──なんてニュースにも萌えた。
「プリキュア」目指すはAKB48 劇場版8作目公開 : 映画ニュース - 映画.com
スパロボ大戦映画」ってのは一から十まで資本主義の論理で作られるプログラム・ピクチャーの極みみたいなものだのだけれど、それでも魂を入れるのはやはり人間なのだね。


来年は稲上キュアと馬越キュアが戦う『プリキュアディケイド』を希望! あ、まだ10年経ってないか……。

*1:一つ上の世代が下の世代の面動をみる体育会系システム!

*2:「どれみ」に似てるのは絵柄だけじゃない