おれなりのテロル

 金が無い。
 昨年の今ごろも、六ヶ月前も、金が無かった。理由は簡単で、博士課程の社会人コースに通っている大学院の学費の支払いがあったからだ。
 ただ、今年はまだマシかもしれない。一年前も、六ヶ月前も、支払い前日に駅前のCDにてクレジットカードのローンサービスを利用して○万円引き出し、それをそのまま自分の口座に入金したりしていたのだが、今年は必要無かった。何故かというと、こないだ幹事を務めた御蔵島旅行の船賃がカード精算で、その分の金は皆から現金で回収したからだ。で、多分来月頭に十数万円引き落とされる予定だが、口座には四万円しかない。くそ。これはおれが悪いんじゃない。政治が悪いんだ。


 ゴールデンウィークに旧友のスズキくんとバーベキューをした。スズキくんとこも共稼ぎなのだが、基本的に夫の稼ぎのみから生活費を賄い、妻の稼ぎはそっくりそのまま貯金しているそうだ。スゲーなー。子供がいないからこそできる方法だよな。
 我が家は口座を三つ用意している。一つはおれ用。一つは嫁用。残る一つは共用だ。給料日とボーナス日にまとまった金額をそこに入れ、生活費や子供の養育費をそこから出すというシステムだ。ちなみに、嫁の年収はおれより5〜10%少ないくらいだ。早い話、いつでも別れられる体制でいるわけなのだが、おれ一人で家族四人を養っていける稼ぎがあれば、結果は違っていただろう。くそくそくそくそ。これはおれに甲斐性が無いんじゃない。日本をこのような経済状況にしてしまった、政治が悪いのだ。


 そんな我が家の共用口座に今月14日、定額給付金なるものが振り込まれるという。大人二人、18歳以下の児童二人の四人家族なので、七万六千円の大金だ。
 やったぜ!……と喜ぶほど、おれは子供ではない。学費は自分の口座から出しているので、何の足しにもならない……という理由は横に置いておいて、政府というのは基本的に我々が金を出し合って運営している互助会であって、その互助会がメンバー全員がトクするほど金をくれるなんておかしな話、原理的にありえないということが理解できるくらい、おれは年齢を重ねている。伊達におっさんではない。

大金使って、せっかく集めた税金を大金をかけて配るという世紀の無駄政策ですが、

……というホリエモンの言葉は正しい。振込手数料だけで159億円だそうだ。


 まぁ、本当の問題は振込み手数料などではない。これはつまり、ここの人がスゲー良い表現で言ってるように、選挙数ヶ月前という好タイミングに清き一票をお持ちの皆様に現金を配りたい、ってことだ。定額給付金の総予算は二兆円だそうだが、国民の税金を使った選挙対策資金二兆円、ってことだ。


 同じ七万六千円分のトクでも、児童手当増額とか、保育園や幼稚園の無料化とか、高校・大学の授業料の引き下げとかにしてくんねーかな。あるいは、地熱発電所建設で電気料金割引とかでも良いよ。おこづかいくれるから投票するってわけじゃなくて、効果的な金の使い方を知ってる人間を支持する為に選挙で票を入れるってのが民主主義だと学校で習ったんだがな。


 くそくそくそくそ。おれは、こんな愚かな政策をとるくそみたいな政府に、行動でNO!と示してやるぞ!レンタルトラックで渋谷の麻生の自宅につっこんだり、永田町で刃物を振り回したり、国会議事堂の議員控室に赤痢菌ぶっかけた菓子を置いたりしてやる!……のはちょっと怖いので、小物なおれでも実行可能なテロを考えた。



 おれは入金された定額給付金七万六千円を、今後十年間ビタ一文たりとも使わんぞ!一円でも使えば一円なりの経済効果があるというのは分かっているが、絶対に使わん。ついでに次の選挙で自民党にも公明党にも投票しない。この世には神も仏も池田もバモイドオキ神もいないってことを、麻生に教えてやるぜ!ウケケケケケケ!


……などということを考えていたら、電子レンジが壊れたので買い換えたいと嫁が訴えてきた。定額給付金もあるし、と。