「岡田斗司夫のひとり夜話」その2

(前回の続きです)

せつない話-1

  • 中一〜中三までギターを持ち歩いていた。当時、好きになった女の子の自宅の横が空き地で、土管が積んであった。……笑うなよ(笑)。おれだって恥ずかしいんだよ!!
  • どういうことかというと、ついこの前まで、僕の人生の一大テーマは「格好良い」だった。それも、さっきテレビで観たような「格好良さ」。
  • 小学生の時は軍歌が大好きだった。フォークみたいなものは軟弱だと思っていた。でも姉の机の上に置いてあったフォークの歌詞カードを見て考えが変わった。全部、「〜そういうものなのです」なんて具合に終わる歌詞で、なんて格好良いんだ!おれも中村雅俊みたいなアニキが欲しい!と思った。
  • 当時、近くの神社でトランペットを吹いている兄ちゃんがいた。それも「なんて格好良いんだ!」と思った。
  • トランペットだと二番煎じになるのでギターにした。サイモン&ガーファンクルみたいな曲を弾こう!と考えた。
  • ただ、僕は肌が弱い体質だった。歳をとった今でこそマシになったものの、25歳くらいまで、風呂に入って体温が上がるとジンマシンが出た。だからニ週に一回くらいしか風呂に入らなかった。庵野秀明と出会って、その事を話したら「僕もそうなんです!」と同意されたが、オマエはただ風呂嫌いなだけだろ!(笑)
  • 指先も柔らかいので弦が押さえられず、上手く音を出せなかった。
  • しかし、土管の上で毎週練習していたら、「禁じられた遊び」の第一小節くらいまでは弾けるようになった。指先も固くなった。
  • あとから聞いたら、当の好きだった女子は当然僕が演奏していたことに気づいていて、しかもそれが求愛行動であるということにも気づいていたそうだ。でも、近所の空き地の土管の上で三、四ヶ月もギターを演奏している人の隣に座れるわけないでしょ!と言われた。当然、付き合うことも無かった。

せつない話-2

  • フォークの後はマカロニ・ウエスタンに夢中になった。特に「続・荒野の用心棒」に。おれもジャンゴみたいに、スゲー汚い格好してカンオケひきずって歩きたい!と思った。正に中学生男子ワールド。

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  • ギターが弾ける男の次はジャンゴのような男になりたかった。「続・荒野の用心棒」では、ジャクソン派とウーゴ将軍派が殺し合いの対立争いをしている村に風来坊であるジャンゴが立ち寄り、混血娘マリアと恋に落ちたりする。僕も混血のマリアと恋に落ちたい!と思い、クラスの中の混血っぽい顔立ちをした女の子が好きになったりした(笑)。
  • でも、当時の中学校は先生も生徒も仲が良かった。唯一あった争いは坊主派と長髪派の争いだけ。混血っぽい顔立ちをしたナカツジさんが長髪派に誘拐されるなんてことはない(笑)。
  • 「続・荒野の用心棒」は「ジャンゴ」のテーマ曲が本当に格好良い。生徒手帳にカタカナで歌詞を書いて覚えた。未だに唄える。だから今日は唄います(笑)。今日、大学一年生になる娘がこのイベントに来ると言ったが、必死に止めたよ!(笑)


(ここで岡田斗司夫が実際にジャンゴのテーマ曲を熱唱)



(「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の吉幾三版「ジャンゴ」のテーマを思い出した)

  • それで、唄えるようになって、格好良くなったかというと、否!断じて否!

せつない話-3

  • 高校になって彼女ができた。映画の上映会に行きまくったり、SF小説ばかり読んで全然勉強しなかったら浪人した。しかし、彼女はきちんと進学した。
  • 浪人中もSF作家になりたい!と彼女に語っていたら、「岡田くんはいつも”なりたい”ばっかりだなぁ。私はやることばっかりだよ」と自然な感じで言われ、心底ゾッとした。
  • 彼女は高校時代もきちんと勉強して、大学に受かっている一方で、自分は大学にも受からず、今も勉強していない。好きな人の前で実現性の無い嘘ばかりついている。
  • その時から「なりたい」という言葉は使わないようにした。「なる」というのはあくまで状態であって、自分の心のコンパスでしかない。現状と「なりたい」状態の合間には「する」という行動のステップがある。「なりたい」と思ったら、常に「する」行動を考えるようにした。
  • だから今も、学生に「こうなりたいんです」と相談されたら、自分の今の状態を一番下に書いて、「なりたい」目標を一番上に書いて、そこまでのステップを三段階にわけて考えてみよう!とアドバイスする。
  • でも、まだギターが弾けない。ギター弾けるように「なりたい」なぁ(笑)。

盛り上がる話-1

  • 著書に書いている内容はある程度整理された、まともな状態である。だからよく著書を読んだ知り合いに「普段の岡田さんはもっと頭がおかしいですよね?」なんて言われる。その通りで、今日はそれを具体例を挙げて説明する為に普段つけているノートを公開します。
  • 先ほど生徒手帳をみせたのだが、あのように日々の思いつきを記したノートを中学くらいからつけている。今日の為に高校の頃つけていたノートを見返したのだが、「くみこー!」と大書してある。なんでそんなことを書いたのか、まったく思い出せない(笑)。武田久美子のことかもしれないという悪い予感も(笑)。その横には「ヤマト」放送時のテレビ欄が。その横には明星チャルメラの美味しい作り方が。あまりにも恥ずかしかったので今日は持ってこなかった。
  • 今はどのようなノートをつけているかというと、大学ノートの見開きを丸々使って、ワンアイディアを書いている。だいたい二、三ヶ月で一冊使い切る。
  • たとえばこれはテレビに出る時の服装について考察している。白いシャツに○○を合わせたものをAパターン、○○に××を合わせたものをBパターンとし、それを発展させて……等々、おしゃれな人ならセンスでやることを、全然おしゃれじゃなくセンスもないので論理的にやっている。
  • たとえばこれは「いつまでもデブと思うなよ」が売れ出したころのノート。当時一緒に出版した「「世界征服」は可能か?」等と一緒に統計をとって、減衰曲線を書いて、最終的な売れ行きを予想したりしている。

盛り上がる話-2

  • このイベントの最終目標として、ひとまず「武道館で一万人トークライブ」もしくは「地上波でレギュラー生番組」を考えている。僕は本気だ(笑)。勿論、武道館の次は東京ドームで、「ジョー90」のテーマ曲を出囃子としてステージにせり上がってくるわけだ。
  • このイベントは僕一人でやってるわけじゃなく、プロデューサーとかカメラマンが必要なので五、六人くらいのスタッフでやっている。ハコが東京ドームとなると、お客さんの誘導が含まれるので、数百人単位のスタッフが必要になってくる。それは誰がやるのかというと、今日この場に集まった150人と大阪の100人に無償でやって貰います(笑)。
  • 先ほどの話どおり、「なる」ではなく「する」が大切なので、2011年末を目標に武道館までのステップを考えてみた。これはみうらじゅんを模倣している(笑)。(みうらじゅんいとうせいこうと共に武道館での「ザ・スライドショー」のイベントというかライブ経験がある)
    1. ステップ1:現在
      1. ロフトプラスワンで三ヶ月連続150人満員動員
      2. 大阪等の地方都市で100人規模の動員
      3. 東京で個展:内容はまだ考えてない
    2. ステップ2:年内
      1. ロフトプラスワン150人前売りが即日完売
      2. BS、CS、ラジオ、ネット放送等でレギュラー番組を持つ
    3. ステップ3:2010年
      1. パルコ劇場、紀伊国屋ホール、サザンシアター等の400-500クラスのハコでイベント
      2. BS、CS、ラジオ、ネット放送等で生放送のレギュラー番組:ここいら辺で生放送をやらないと母集団が大きくならない。たとえば勝間和代の本が20万部売れたといっても、ファンが20万人しかいないというわけではない。200万人くらいの勝間和代に関心を持つ母集団がいて、その中のビビッドに動く集団が1割ということ。
    4. ステップ4:2010年末〜2011年正月
      1. 恵比寿LIQUIDROOM等の1000人クラスのハコでイベント
      2. 岡田斗司夫祭り開催:みうらじゅんもこの辺りで「みうらじゅん大物産展」をラフォーレ原宿でやっていた。
    5. ステップ5:2011年末
      1. 武道館で10000人トークライブ
      2. 地上波で生放送のレギュラー番組獲得
  • 時期を考えるとギリギリのスケジューリング(笑)。

盛り上がる話-3

  • 普通に考えたら無理な目標とステップなので、色々と戦略を考えた。名づけて「ドームへの道」
  • まず僕はキャラが弱いと思うので、仮装してキャラ立てを考えた。女装、占い師……色々あるが、どれも難しそう。
  • もう一つ、1000人以上の動員を目指すとなると、「普通の人」にもわかる内容でなくてはならない。「ジャンゴのテーマ」とか唄って聞かせている場合じゃない。
  • つまり、メジャー化、大衆化しなくてはならない。これはイッセー尾形柳原可奈子への流れみたいなもの説明・理解できそうだ。
  • イッセー尾形柳原可奈子の芸は良く似ている。どちらもピン芸人で、特徴的な一般人の言動をカリカチュアライズする一人芝居である。しかし、イッセーは芸能界的に大御所であるがテレビ的にマイナーであるのに対し、柳原可奈子はゴールデンのバラエティー番組にガンガン出るくらいメジャーである。
  • その差はどこかというと、まずネタの時間。イッセーのネタはどれも数十分単位で、ある程度観続け手シチュエーションを把握しないと面白さが分からない。一方、柳原可奈子のネタは3分とか5分単位で、始まって数秒で笑いが起こる構成になっている。つまり、分かりやすく、カジュアルになっている。(友近もそうですね)
  • みうらじゅんも同様の大衆化をしている。「ダサいもの」を「下世話」で「笑える」とみることで、分かりやすいエンターテインメントとしている。具体例は「いやげ物」、「カスハガ」、「見仏記」等。
  • 僕も、知的で論理的なものを大衆化して、エンターテインメントとしたい。「プチクリ」なんかが当てはまるか?
  • みうらじゅんの公式というものを考えた。まずf(x)=yとする
  • x=仏とか絵ハガキとかみやげ物とか、流行り廃りが無いもの。みうらじゅんは意外なことにあまりテレビに出演しないことも重要である。
  • f=ダジャレ、愛、ツッコミといった独特の視点。これにより変換されたものがy=作品となる。
  • 僕もみうらじゅんを見習って、「な学会」というものを考えた。「と学会」の問題点はいくら頑張ってもトンデモが減らないこと。どんなにトンデモないものでも実在するんだ!と屁理屈で納得させる「なるほどね学会」、通称「な学会」というのはどうか。勿論「と学会」のライバルで、裏切り者として仮面を被る(笑)。でも、誰に相談してもそれは駄目だろうと言われる(笑)。

盛り上がる話-4

  • テーマソングも考えた。まずエンディング・テーマはテレビドラマ「若者たち」主題歌の替え歌で「ドームへの道」!皆で唄おう!

(実際に会場皆で合唱する。「もっと声を出して!」と手を上げて鼓舞する岡田斗司夫。歌詞はメモせず。)

  • オープニング・テーマは「アルプスの少女ハイジ」の主題歌「おしえて」 の替え歌で、「レッツ・ゴー・ロジカル」


「レッツ・ゴー・ロジカル」


ジブリはなぜ 声優を使わない
メディアセンターなぜ 民主党やめたのの
おしえて 岡田さん おしえて 岡田さん
おしえて もっとロジカルに


アニメ実写化なぜ 微妙にイタイの
ドラゴンボールなぜ あんなになったの
おしえて 岡田さん おしえて 岡田さん
おしえて もっとロジカルに


Yahoo!はなぜ Gyaoジョッキーやめたの
ロフトはなぜ トイレが混んでるのの
おしえて 岡田さん おしえて 岡田さん
おしえて もっとロジカルに


(これも実際に会場皆で合唱*1。場内爆笑。)


  • Yahoo〜のくだりは恨みをこめて歌って欲しい(笑)。
  • これは、こういう遊びに参加しませんか?という僕から皆へのお誘い。どこで力尽きてもそれなりに面白いだろう。

アンコール:次回予告

    • 信じられない映画
    • ロケット花火を10万円分購入
    • 究極のメイド喫茶

感想

というわけで、今回も面白かったのだが、全体的にDVD化を意識したかのようなお行儀の良さも印象的だった。以前のように、一人喋りが熱くなりすぎて脱線に脱線を重ね、終電逃しちゃう客とか出てしまうような回ではなかった。まぁ、そういうのも今後あるのだろう。
キングオブコントマンガノゲンバ事件に関しては私も思うところあったので、大変為になった。


事件は会議室で起きてるんじゃない 、マンガノゲンバで起きてるんだ! - 冒険野郎マクガイヤー@はてな
キングオブコント2009雑感 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな

なるほど、台本みせろと言えるのは鈴木敏夫だけだろうな。でも、宮崎駿にとっての鈴木敏夫唐沢なをきにとっての唐沢よしこなんじゃなかろうか?などと考えると非常に興味深い。つまり、作家VS作家の対立を避けるためにプロデューサー的資質を持った人間が調整し、両者にとって最適な落としどころを見つけるわけだ。テレビ放送のみならず、DVD化までしちゃうというのはWin-Win関係の賜物という感じがする。
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ひとり夜話武道館計画に関しては、どう考えても二年弱では無理そうな気がする。実をいうと、自分はみうらじゅんの武道館イベントというか「ザ・スライドショー7 〜ザ・ロックンロール・スライダーズin武道館」に実際足を運んだのだが、わりかし空席が目立ったりしたのだよね。チケットも完売しなかったらしく、開催当日直前まで公式サイトやファンクラブで絶賛発売中!とアナウンスしていたし。以後、現在まで武道館での開催が無いことを考えると、商業的に大成功とはいえないイベントだったのだろう。
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ただ、みうらじゅんをモデルケースとするのは間違ってないと思う。
ザ・スライドショー」はみうらじゅん単独のイベントというわけではなく、みうらじゅんが用意したスライドというボケに対して、いとうせいこうがアドリブでツッコむという一種のお笑いライブであった。みうらじゅんの視点+いとうせいこうの視点と、二つの視点があって、その混淆が一つの分かりやすさを生んだわけだ。


なので、やっぱりこの際岡田斗司夫もゲストを呼ぶのが良いのではなかろうか。一昔前ならオタクアミーゴスという形が良かったのかもしれないが、近年は唐沢俊一の劣化が激しいので、鼎談本を出した山本弘田中公平を呼ぶというのはどうか。ステップ3の4-500人くらいなら余裕で動員できると思うのだが。
封印―史上最強のオタク座談会 (史上最強のオタク座談会)
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一人でやるのならば、みうらじゅんがスライドを使ったように、画像や映像を使うのが良いと思う。「寝言」での「ガンダム」解説や「On Your Mark」解説は面白かった。というわけで、次回の「信じられない映画」には超期待。
……まさか「虫皇帝」じゃないよね?や、この10年で最も存在が信じられない映画だったもので。

*1:メモが不十分なので若干違う箇所があるかも