M-1グランプリ雑感その2:オードリーについて

 昨日の続きのような続きでないような話なのだけれど、私はオードリーというコンビについてあまりよく知らなかったし、特段に面白いとも意識していなかったのだが、今回のM-1グランプリで驚いた。あのあの春日というのはえらい男だね。今回のM-1グランプリで最も得したのはオードリーなんじゃないのかな。

 敗者復活から勝ち上がってきて大活躍したという意味では昨年のサンドイッチマンも2003年のアンタッチャブルも得したし、優勝しないまでも決勝進出により一挙にメジャーになったという意味では2002年の笑い飯や2004年の南海キャンディーズも得したけれど、今回のオードリーの得は若干意味が違うと思う。彼らはネタ以外の振る舞いの部分で、フリートークにもバラエティーにも急なアクシデントにも対応できる、自分達の「お笑いタレント」としての実力を証明したのではなかろうか。

 「お笑い」というものの厄介な部分は、一生懸命さが外に出てしまうと笑えないというところだろう。いや、一生懸命さを笑われることはあるよ。でも、笑わせることはできないよね。狂ったようにお馬鹿な行為に打ち込む様を「敢えて」見せることで笑わせるという手段もあるけれど、それは「敢えて」の要素が入り込むことで一生懸命では無くなってしまうし。

 M-1グランプリというコンテストでもそれは同じで、どんなに漫才が上手くても、一生懸命さが垣間見えると冷めてしまうのだな。去年のキングコングも一昨年の麒麟もネタや合間のフリートークの最中に、この日の為に一生懸命練習して賭けているんだなぁ、なんてことを想像してしまい、心から笑えなくなってしまった時があった。

 だが、今年はどのコンビも比較的上手く振舞っていて、緊張してるしてるとイジられ続けたザ・パンチですら緊張をおいしい笑いに変えていて、笑い飯の西田は「思てたんと違ーーーう!」でネタ以上の笑いを作ってたりもしたのだけれど、そういう意味で一番凄かったのはオードリーの春日なんじゃないかと思う。
 M-1グランプリというのはやはり現在の若手芸人にとって特殊な場で、大なり小なり緊張していて、実力を発揮できないことも少なくないのに、彼は「オードリーの春日俊彰」というちょっと昔のイイ男的キャラを、よく番組の頭からケツまで演じられるよね。普通、特異なキャラで世に出て来た芸人は番組のある時点をもってキャラを演じなくなるものなのだけれど、常にキャラを演じきって素をみせないという部分では、鳥居みゆきくらいのものがあるんじゃないかと思う。や、あの場所で「自信がなければここに立っていませんよ!」なんてなかなか言えるものではない。

 正確にいえば、ネタの途中に一回噛んだ時があって、あの時、彼は一瞬だけ素顔をみせたのだが、それも相方のナイスフォローで見事に笑いに変換していた。あれは完全にアドリブだと思うのだけれど、オードリーというコンビは急なアクシデントにも対応可能なことをみせつけたわけだ。えらいのは春日だけじゃないのだな。

 そういうわけで、来年はNON STYLEよりもオードリーの方が仕事の増え具合がデカいんじゃないかと思うのだけれど、既に売れっ子ですか、そうですか。