聖なる童貞伝説第二章:「トランスフォーマー/リベンジ」
TF者にとって20年に一度の祭かと思われた実写映画化であったが、二回目の祭りは意外にも割合早く訪れた。
というわけで、「トランスフォーマー:リベンジ」を観てきたのだが、なんつーか凄くいい意味でクレイジーな映画だった。マイケル・ベイは頭のどこかが完全におかしいと思う。
「ストーリーがつまらん」とか「脚本が破綻している」とか「幾ら大ヒットしてもこんな映画ばかりじゃ困る*1」とか、散々批判された前作であるが、ストーリーが無いなんてフザけたことぬかすんじゃねぇ!と声を大にして言いたい。あれは、アメリカのボンクラ高校生が(親の金で)初めて買った車が偶然にもトランスフォーマーで、色々な厄介ごとに巻き込まれるのだが、でもそれをキッカケにクラスで憧れの女子と良い関係になれ、ついでに地球の大ピンチも救ってしまうという、童貞男子なら誰もが一度は頭に浮かべるであろう黄金ストーリーなんだよ!
だから、続編である「トランスフォーマー/リベンジ」のストーリーも良かった。
以下ネタバレ。
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シャイア・ラブーフ, ミーガン・フォックス, ジョシュ・デュアメル, レイチェル・テイラー, マイケル・ベイ
前作でエロくてビッチな彼女をゲットしたサム。しかし、男は一つの場所に安住してはならない。そこで彼女と親友のバンブルビーを棄て、甘やかし放題の両親の元も離れ、授業料年間4万ドルの寄宿舎つきお坊ちゃん大学に進学するのだが、ルームメイトのレオは童貞だった……という童貞伝説第二章、「旅の仲間」編だ!!
レオの童貞スピリッツ溢れるハッキングにより、学生寮は美人ばかり。おまけに、前作のマクガフィン「オールスパーク」の欠片が持つ超パワーにより童貞ならぬD.T.パワーを復活させるサム。お得意の童貞くさい早口しゃべりとオーバーリアクションも大復活だ!
だが、何分にも童貞いやさD.T.なので、コンボイ司令官のたっての頼みも断ってしまうサム。「童貞に戦争なんて関係ないよ!」そこに襲いかかるセクサロイドじゃなかったエロ・トランスフォーマー*2!どんなにボディ・タッチしてもノー問題、なぜなら人間じゃなくてトランスフォーマーだから!まさに童貞の夢!「ターミネーター4」なんて及びじゃないぜ!
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一方、ビッチでエロい彼女は「WALL・E」への悪意たっぷりなデストロンを返り討ちにし、逆に下僕としていた……。母さんのヤクネタといい、女が強いさまは、まさに童貞イズム!
その後も、実は童貞であることが判明するジョン・タトゥーロと共に、童貞ゆえの踏ん切りの無さで退場してしまったコンボイ司令官を助ける為、世界中をテレポーテーションで大アドベンチャー!1ミリの疑い無く正義の軍隊であるアメリカ軍も、童貞主人公を全力でサポート!おまけに伝説のベクターシグマじゃなかったプライム達から夢の中で「童貞にしては勇気がある」と御墨付きを貰い、蘇ったマトリクスでコンボイを大復活!!
いや、このプロット考えた奴は天才だ。天才童貞だ。ストーリーがつまらんようにみえるのは、プロットではなく脚本や演出の問題だな。
なんかこの映画、メインで登場するキャラのほとんどは全員早口でお調子者で落ち着きが無くて挙動不信で、狂人のように見えるのだな。で、それ以外はエロ担当。最初は、現時点において世界最高と断言できるCGIパートに負けないようにするという目的で、俳優にしかできないお下品ギャグ*3を盛り込んでいるのかと思ったのだが、後半にゆくに従って人間キャラのみならずトランスフォーマーまでお下品・狂人ギャグを繰り出してきたので、本当に笑えた。
あと、前作よりトランスフォーマー達のキャラクターが濃くなったのは実に良い点だ。やっぱり「トランスフォーマー」の魅力というのは、まるで人間のようなロボットが熱い心で戦ったり悩んだり軽口を叩いたり下品なジョークを飛ばしたりするところなんだよな!
それでも、いきなりスキッズ兄弟が伏線無しで兄弟喧嘩を始めたり、いきなりエップス曹長が凡ミスをやらかしたり、いきなりジェットファイアがコンボイに自己犠牲でパーツ提供するところはちょっと……。いや、いつものマイケル・ベイといえばマイケル・ベイなのだが、もうちょっと兄弟喧嘩の伏線を張っておくとか、エップスがお調子者である描写をしておくとか、コンボイやサムの活躍シーンにジェットファイアが胸打たれるカットを入れ込むとかしてほしかったなぁ。
戦闘シーンは前作と同じく猛スピードでカメラもぐりんぐりん動いたていたのだが、やっぱりこれは対象物あまりにも猛スピードで動いていてカメラが追いつかない的な演出である板野サーカスへのオマージュなんだよ!だから、これは作り手から観客への挑戦であって、「何が起こってるのかわからない」なんてぬかす奴は修行が足りないんだ!!大学教授の初登場シーンでさえカメラが回り込むのは明らかにビョーキだと思うけどな。
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もう一つ、「バッド・ボーイズ2バッド」では死体を路上に投げて追跡を妨害するという、普通思いついてもやらねーだろ的な演出を披露したマイケル・ベイの悪趣味さが今回も大爆発。母さんのヤクネタ、WALL・E交尾ネタ*4、NEST基地での戦死者追悼、空母沈没時にしっかりと移りこむ海底へ沈降する死体と、薬・シモ・死と三拍子揃った悪趣味ぶりは流石ベイ先生と拍手で迎えたい。生産中止のF-22と経営危機に陥ったGM製の車が大戦争!というのは偶然か。
ただ、ここまでやられるとF-22対SR-71の空中戦とか、ラヴェージVSアーシー三姉妹の高速戦闘とか、デバスターとジェットコンボイの合体対決とか、明らかに美味しいネタを逃しているのが残念といえば残念だった。デバスターやジャガーやザ・フォールンといったキャラ立ちまくりの敵が割合あっさり倒されるのもちと残念。A-10と空母はちゃんとトランスフォームさせて欲しい。パワーグライドとかブロードサイドとかいるじゃん!
特に、ジェットファイアとコンボイが合体すると聞いて、すわ映画版のコンボイはコンボイといってもアルマダコンボイか!と期待したのだが、単にパーツ流用ってことだったんだね。「おぬしの熱き心に感じ入ったぞ、プライム。ここは一つ合体といこう」「何、ベクターシグマに秘められし伝説の闘法、スーパー○○合体か!」みたいな、日本ではベタベタだがアメリカでは全くやられない映像演出がハリウッドのスーパークオリティでついに観られる*5と期待していたのだが。
真面目な感想を書いておくと、オートボットと人間であるNEST部隊が当然のように共闘し、多機関からの横槍にも抵抗して当然のようにオートボット達を擁護するという描写は本当に良かった。いや、スピルバーグならこの方向を押し進めて、アイアンハイドとエップス曹長の友情とか、ジェットファイアの若者達への思いみたいなもの*6を描いたのだろうなぁ。
でも、それをやらないでアホ映画に仕立てるのが、マイケル・ベイといえばマイケル・ベイか。吹き替え版も観にいこう。