ドイツ軍人に萌え萌えの伝説:「ワルキューレ」

 三連休なので夜は映画観まくれるのが嬉しい今日この頃だ。
で、「ワルキューレ」を観てきたのだが、こんなにも欲望に忠実な映画、最近じゃ久しぶりに観たな。


 欲望っつうのは、あれだ。制服着た、良い顔した色んなタイプの美中年男が、悲壮感たっぷりに大活躍する映画ってことだ。私は自身にゲイっぽい資質があることを自覚している(きちんと結婚して子供もいるので大っぴらにできるぜ!)ので、良く理解できる。


 我々は軍装が大好き、ドイツ軍が大好き、ナチスが大好き、ロングブーツが大好き、赤白黒の帝国三原色が大好き、良い顔したおっさんが大好きなわけですよ。でも、お日様の当たるところでその欲望を大っぴらに開陳するのは憚られる。なにしろ、世間の目というものがある。


 そこで持ってきたのが「ヒトラー暗殺計画」ですよ。このお題目があれば、なんの罪悪感もなくドイツ軍人を応援し、ドイツ軍人を礼賛し、ドイツ軍人に感情移入できるってもんですよ。「ドイツが舞台なのに英語喋ってるのは変」なんてコメントしてる輩は本質を見失ってるよ!!


 そんな意図が最初から最後まで貫かれる本作は、本当に凄い。主人公であるシュタウフェンベルク大佐はモテモテ。副官のヘフテン中尉くんは初対面からメロメロだ。以後、彼は大佐と常に視線を絡ませあい、アイコンタクトだけで語り合う。もし私がドイツの腐女子だったら、大佐と中尉でやおい本作るね!
 しかし、シュタウフェンベルク大佐はクリスチャン・ベルケル演じるクヴィルンハイム大佐にゾッコンだ。暗殺に用いる爆弾について力強く説明するクヴィルンハイム大佐にホレた。私がホレたのだから、シュタウフェンベルク大佐もホレたに違いない。「政治家以外の意見を重視する」なんて理屈をつけてホレた相手を持ち上げる始末だ。で、クヴィルンハイム大佐も「そんな遅い判断で、彼を見殺しにする気ですか!」と答える。これぞ愛だ!もし私がドイツの腐女子だったら(以下略)!
 他に、ケネス・ブラナー演じるトレスコウ少将の苦労っぷりやテレンス・スタンプ演じるベック参謀長の枯れっぷりも良いのだが、何よりもビル・ナイ演じるオルブリヒト将軍に萌える。ここぞ!という時に慎重になったかと思えば「昼飯喰ってくる」だよ!なに?この弱腰っぷり!「ショーン・オブ・ザ・デッド」とか「パイレーツ・オブ・カリビアン」とか先週観た「アンダーワールド・ビギンズ」のビル・ナイとは180度違うビル・ナイに、萌える!!


 監督であるブライアン・シンガーのゲイとしての資質が「Xメン」以上に上手く作用した傑作といえよう。同じ史実を元にしながらも全く作風の異なる「オペレーション・ワルキューレ」なんかと比較すると私の言いたいことが良く分かって貰えるかと思う。
オペレーション・ワルキューレ [DVD]
ヨ・バイアー
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X-MEN トリロジーBOX [DVD]
ヒュー・ジャックマン, パトリック・スチュワート, イアン・マッケラン, アンナ・パキン, ブライアン・シンガー
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 なにしろ本作、ある時点を過ぎるとトム・クルーズはオフィスで電話したり地図に印つけたりしてるだけで、クライマックスもその状態なのだな。これはワイシャツの袖をたくし上げて仕事する○○課長ってカッコいい!みたいなOL目線だよな。


 ただ、あまりにもおっさんばかりが出てくる映画なので、登場人物の見分けがつきにくかろうと配給会社が要らぬ気を使ったのか、いちいち初登場時に人物紹介のテロップが出てくるのがウザい。ウザすぎる。
 これ、原語版ではついてないよね?日曜洋画劇場じゃないんだから。そういうの、普通脚本段階で分かって貰えるように作ってあるから。ちゃんと似た俳優使ってるし、初登場時には「逮捕します、ゲッベルス大臣」なんて具合に名前呼ばせるようにしてるだろ?ヒトラーにまで「ヒトラー総統」とテロップがついた日には、おまえら客を馬鹿にしとんのかと本気で思った。