その10 イルカと変態


形霧:あっ、古林くん!!ちょっとだけ久しぶり!!
古林:1、2ヶ月ぶりくらいか。本当にちょっとだけ久しぶりだな。
形霧:このくらいのペースで会うのが一番いいよね。
古林:2人の為にも本当にそうだなぁ。もっと頻繁にあっていたら、オレはお前のこと本気で嫌いになりそうだからな。
形霧:そうそう。たいして忙しくもないクセに「忙しい」を連発する管理人の為にも、居るか居ないんだかわからない読者の為にも、そして2人の為にもね!!
古林:……いつも元気だな。



形霧:そういえばそういえば、古林くん!こないだの結婚式は感動的だったよね。
古林:毎度のことながら、いきなり話が変わるな。先輩の大暮さんの結婚式だろ?
形霧:そうそう。あれは感動したよねー。花嫁さんは綺麗だったし、両親は泣きじゃくってたし、おまけに引き出物も豪華だったしさ。
古林:結局物かよ!
形霧:やー、やっぱ祝儀代は回収したいじゃん?
古林:セコい奴だなー。



古林…:…あ、そういや引き出物といえば。
形霧:なんだい、古林君。
古林:あのさ、あのさ。あの引き出物の中にクッキーあったろ?
形霧:あったねぇ。サランラップで包んであって、ご両人の手紙までついた、いかにも手作りっぽいクッキーがあったよねぇ。
古林:オマエ、あれ食った?
形霧:もちろん頂いたよ。普通に美味しかったけど、あれがなにか?
古林:……いやね、結婚式が終わって家に帰った後、オレも食おうとしたわけよ。そしたら嫁がさ……。
形霧:ああ、キミん家の気が強い嫁がなにか?
古林:……(笑)。うちの気が強い嫁が(ここはつっこまないぞ!)、「アタシならそんなクッキー、絶対食べな〜い」なんてぬかしたわけよ。
形霧:え!なんで?理由が解らないよ!!
古林:嫁にとって先輩の新妻は他人なわけだけど、なんでも、見ず知らずの他人が作ったクッキーは食えないらしいよ。
形霧:え!なんでなんで?そこらのコンビニで売ってるクッキーだって「見ず知らずの他人が作ったクッキー」じゃん!!
古林:オレもそうつっこんださ!そしたら「そういうちゃんとした製品じゃなくて、手作りってところがなんか重くて嫌だ」だってさ!
形霧:……キミのところの嫁は「嫌だ」「嫌だ」ばっかり言ってるねぇ。



古林:この話にはまだ続きがあるんだよ。
形霧:聞かせて、聞かせて!
古林:あの菅原も結婚式に呼ばれたろ?
形霧:「あの」菅原ね。
古林:ついさっき、偶然あいつに会ったんだけど、「僕モ食イマセンヨー」なんてぬかしやがった!!
形霧:え!うそ!!
古林:「形霧サン、形霧サン」なんて気持ち悪ぃ声で話し掛けてくるからなにかな〜?と思ってたのよ。そしたら「コナイダノ結婚式ノ引キ出物ノ中ニ手作リくっきーアリマシタヨネ?」なんてきたもんだ。
形霧:うわー。
古林:「引キ出物ノ中ニくっきー入レルナンテ常識ナイデスヨネー。アンナ気持チ悪イモノ、誰モ食イマセンヨー」なんてほざくわけよ。お前が常識ないっちゅうねん!!
形霧:お前が気持ち悪いっちゅうねん!!!



古林:ま、そういう訳でさ、世の中には色々な人がいるな、と驚いたわけよ。
形霧:本当にねー。
古林:結婚式の引き出物の中に手作りクッキーなんか入ってたら、心がこもってるな−、嫁さんの気持ちが入ってるなー、なんて思うわけよ、オレなんかはさ。
形霧:そうそう、僕もさ。手書きの年賀状の方が嬉しい、みたいな感じでね。
古林:でも、世の中には手作りの品を気持ちがる輩もいるんだな、とオレは心底驚いたね。
形霧:そうねー。あ、でも…。
古林:でも?
形霧:僕達が「ただの変態」だっていう可能性もあるよね。
古林:なんだよ、それ!!



形霧:……つまりね。僕達は、女が作った食物とか、女が身につけている下着とか、そういう品々が、一般的な人々よりも大好きなただの変態だ、ていう可能性もあるんじゃないかと。
古林:なんだよ、それ!!意味解んねーよ!!
形霧:古林くんは男兄弟かい?
古林:そうだけど、それが何か?
形霧:じゃ、ブラジャーとか大好きかい?
古林:大好きだけど、それが何か?
形霧:じゃ、新品のブラジャーと若い娘が使用済みのブラジャー、どちらが大好きかい?
古林:使用済みの方だけど、それが何か(怒)?
形霧:僕も使用済みの方が好きなんだけど、どうも世の中にはそうではない男が居るらしいよ。
古林:マジかよ!!



形霧:古林君は「男兄弟は変態説」ってのを聞いたことはあるかい?
古林:えっ、初耳だけど。
形霧:これはね、母親を除けば男ばかりの環境で育ってきた奴らは変態になる確立が高い、って仮説なんだ。
古林:ヒドい仮説だな……。
形霧:でも、良く判るだろ?高校生くらいの頃に姉や妹がいる友達の家とかに遊びに行って、あまりの違いにびっくりしたことない?
古林:まぁ、あるよ。ベランダにパステルカラーの下着とか干してあるのを見たらドキドキしたもんなぁ。
形霧:でも、そいつは「なに姉ちゃんの下着に発情してんだよ!」みたいな態度してただろ。
古林:そうそう。その時は、オマエにとっては姉ちゃんでもオレにとっては立派な異性なんだよ、って反論していたんだが。
形霧:結局、僕達が変態だっただけなのさ……。
古林:おいおい、そうなるのかよ。



形霧:他に、こんな話も聞いたのだけれど……。
古林:また同じようにヒドい話じゃないだろうな?
形霧:友達の会社で、女子便の便座が常に上がっているという事件が発生したらしいのさ。
古林:別に普通だろ。事件でもなんでもないだろ。
形霧:いやいや、良く考えてみてくれたまえよ。女子便の便器だよ。立って小便したりしないよ。
古林:あ、そうか。……掃除の人じゃないか?オレもトイレ掃除の時は便座を上げて雑巾がけするぞ。
形霧:(古林家では家長がトイレ掃除担当なのか……)そ、それにしても毎回便座が上がっているのは変だ、ということで内々に軽く調査したらしいのよ。
古林:へー、それで。何か解ったの?
形霧:どうも……。
古林:どうも?
形霧:どうも、友達の会社には伝説の「おしっこガブガブ星人」が居たようで……。
古林:やめろ、そんな話!!しかもその話、どっかで聞いたことあるぞ!!!パクリじゃないのか?
形霧:しかも、そのガブガブ星人も男兄弟だったんだってさ。
古林:そこに繋がるのかよ!!しかも、この話は獅子丸先生のパクリだ!!!!



形霧:他に、別の友達からこんな話も聞いたのよ。
古林:もうオマエの話、聞きたくねーなー。
形霧:こんどは汚い話じゃないから安心してよ。
古林:本当かよ。
形霧:その友人は千葉の僻地に住んでいて、いつも通学通勤時間が長かったんだってさ。
古林:へー、それで(投げやり)。
形霧:で、電車の中で、余りにも暇すぎたんで、自分の中でゲームを考えたらしいよ。
古林:どんなゲームなんだよ。
形霧:「いい女に近づくとポイントが溜まるゲーム」
古林:馬鹿だ!!
形霧:女子高生の半径15 cmに近づいたら100ポイント、満員電車でOLに触れたら500ポイント、朝シャンの匂いを嗅げたら1000ポイント、てな具合だったらしいよ。
古林:大馬鹿だ!!!
形霧:しかも、その「女ポイント・ゲーム」も発明した友人も男兄弟だよ。
古林:またしてもそこに繋がるのかよ!!!
形霧:ちなみに、童貞を捨てられたら一億ポイントだって。迂闊にも嫁を妊娠させちゃった古林君は5京ポイントくらいかな?
古林:大きなお世話だよ!!!!



古林:まったく、毎度のことながらオマエの話は聞いてて気持ち悪ぃなぁ。
形霧:でも、「男兄弟は変態説」には納得できるでしょ。
古林:うーん、ある程度はな。
形霧:昔、ヨーロッパの映画で、山奥にある処女だらけの修道院に1人の若いイケメン男が迷い込んじゃうって映画を見たんだよ。で、ふとしたことがきっかけでシスター達の理性のタガが飛んじゃって、一本の肉棒を求めて骨肉の争いが巻き起こる、っていう夢のような映画だったんだけど、その逆パターンみたいなもんだよね。
古林:……オマエの映画の要約も聞いてて気持ちが悪くなるぞ。



古林:まったくあいつの話にはついていけねーなー。
イルカのお姉さん:あっ、古林君。お先にお疲れさま。
古林:ああ、お疲れ様。今日はプールから出るの早いね。
イルカのお姉さん:う、うん。今日は用事があるもんで……。じゃ、お疲れさま。
古林:お疲れー。……あーあっと。オレも今日の自主トレは早上がりにするかな。


古林:……あれ?
古林:……なんだかここいら辺の水、鉄臭いぞ(イルカは人間よりも匂いに敏感です)?
古林:……それに、微妙に色が違う。
古林:……もしかして。
古林:……もしかして。…そういえばあのイルカのお姉さん、一ヶ月ほど前に急に有休とってたな。あの日は忙しかったのに、朝いきなり休みって聞かされたから覚えているぞ。

古林:……これは5000ポイントくらいかな(ニヤリ)。