子供に読ませたくないマンガ

定本コロコロ爆伝!! 1977-2009 ~ 「コロコロコミック」全史
渋谷 直角
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 「定本コロコロ爆伝!!」を読んだら無性に再読したくなって、「ロボッ太くん」の愛蔵版を購入してしまった。金欠なのだが、我慢できなかった。まぁ、変なプレミアがついて入手できなく可能性もあるので、今のうちに買っておくのも吉だよな。既に「ハムサラダくん」と「あまいぞ!男吾」は購入済だし、あとは「魔界ゾンべえ」を実家の魔窟から発見するだけだ。
ロボッ太くん 1 (てんとう虫コミックスライブラリー版)
とりい かずよし
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ロボッ太くん 2 (てんとう虫コミックスライブラリー版)
とりい かずよし
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 で、「ロボッ太くん」なのだが、うんこ・ちんこ・しっこ・まんことガキんちょのの大好物満載で、やっぱり面白い。



↑の、秘密基地断面図なんて、強烈に記憶に残っていたものなぁ。この、ボットン便所のうんこ溜めの合間をわざわざ通り抜ける脱出シュートのワクワク感といったら、もう!他にも、「まさか彼女なんかできてないだろうな?」と仲間内で確認しあう非モテホモソーシャルの原点的描写や、キンポコ少年団とゲーハー中年団との終わり無き抗争とか、リカちゃんウーマンとの対決にみるコロコロなりのエロさの受容*1とか、現在の目でみると特筆すべき要素でいっぱいだ。


 「ロボッ太くん」については、ちょっと特別な思い出がある。


 私は小学校一年から三年間、父の転勤が理由でアメリカに住んでいたのだが、その頃日本人の友達の間で、日本のマンガを貸し借りするのが流行っていたのだな。なにせアメリカはマンガ後進国だ。そこいら辺の本屋にマンガコーナーなど無いし、そもそも本屋の数が圧倒的に少なかった。一方で日本のマンガは専門店があり、フリーウェイで30分ほどかかる場所だったのだが、そこに行けば確実に入手できた。この前アメリカに来た小学生にとっては、英語はなんとか話せても読めない代物であった、という理由もある。
 私はコロコロ派だったのだが、中にはボンボン派やジャンプ派の友達もおり、「プラモ狂四郎 」や「キン肉マン」はあの貸し借りを通じて、その存在を初めて知った。土曜日のみ日本語補習校に通っていたのだがそこにマンガを持ち寄り、貸し借りするのが挨拶代わりになっていたのだな。また、アメリカで過ごすとすっかり日本語を忘れてしまうようなガキんちょも珍しくないので、日本語補習校に日本語マンガを持ち込むというのは先生から半ば推奨される行為でもあった。さすがに授業中に広げていると怒られたが。でも、いかにも団塊世代みたいな校長先生から「鉄腕アトム」を借りたりしたっけなぁ。


 で、そのマンガ貸し借り友達の中に、サイトー兄弟というのがいた。確か、男三人の兄弟だ。我が家も男兄弟だったので、よく互いの家を訪問して遊んだものだ。そういやサイトーくんの持っていたサンダークラッカーラムジェットといったジェットロン軍団で遊ばせて貰ったなぁ。羨ましかったなぁ。……今回、思い出話ばかりだな。


 さて、ある日のことだ。いつもとは若干異なる表情をした親父に呼び止められた。


「もうサイトーくんにマンガ貸さないように」


……なんでも、サイトーくんの親御さんから、変なマンガをうちの息子達に読ませないでくれというクレームがあったのだという。マクガイヤー家には「これは読め!」というレコメンドは山のようにあったのだが「これは読んじゃイカン!」という焚書制度は全く無かったので、結構なショックを受けたことを今でも憶えている。なんだ、自分の愛読マンガは、そんなにも毛嫌いされる類のものなのか?と。


 その、サイトーくんの親御さんがクレームがつけるほど問題になったマンガというのが、もう皆さん察しはついていることと思うが、「ロボッ太くん」であるわけだ。現在読み返しても、まだこんなにもワクワクするマンガなのに。まぁ、属性が違うってヤツなんだろうな。


 ただ、サイトーくんの親御さんが毛嫌いするであろう要素が、「ロボッ太くん」に存在することも、確かに理解できる。
 例えば、松本伊予をモデルにした*2「伊予子ちゃん」というクラスのヒロイン的な役割のキャラクターがいるのだが、彼女を初めとする女子達が服をひん剥かれ、パンツ一丁で磔にされるというシーンがあるのだ。

 しかも、主人公であるロボっ太達はあくまで伊予子ちゃんを助けようとしている側なのだが、勢い余っておっぱいい揉んだり、再度縛り直したりと、ギャグのネタになったりもする。でも、これは陵辱表現じゃないか!けしからん!プンプン!と怒られれば、確かにそうだと答えざるをえない。

 ただ、当時の我々はこれを「健康的なギャグ」と解釈していたんだよね。その一方で、それなりに興奮していた憶えもある。小学生の自分からこのような二次元エロで、現在の言葉でいえば準児童ポルノで、小さいちんこを確かに硬くさせていたわけだ。そりゃ、佐藤亜紀に変態と罵られても仕方が無いよな。


 サイトー兄弟もおそらく同様だったことだろう。なにせ、幼いながらも男だからな。で、可愛い可愛い息子たちの中に確かに芽生えた「男」に対して、親御さん達は恐怖したのだろうなぁ、なんて無責任に想像する。


 いや、それほど無責任でもないか。戦隊モノ大好きな息子に、デンジピンクが磔にされるYoutube画像観せたら食い入るようにテレビの前に磔ならぬ張りつけになったのだが、そのさまをみて私もちょっと恐怖したもの。



 リアルタイムでこれを観た幼稚園の頃の私も、息子と同様に興奮したのだがな。


 ただ、こういうのって、単純に劣情を催すサプリメンタルなエロだったり、イージーに視聴者を興奮させ視聴率を稼ぐ俗情と結託したエロであるのか、それとも児童マンガや特撮番組という場において、次第に意味をずらされ解体され別な何かに到達しようとする過程なのか、評価の分かれるところだ……などということを考えるのは、私だけかね?なんというか、「ウルトラセブンとキングジョーが神戸港で水飛沫上げながら戦っているシーンを観て、幼心に興奮した」と語る大槻ケンヂと大差無いんじゃないかと思うのだ。
 「キングジョーに対する差別心の反映だ!」と反論されれば、それまでなのだが。

*1:このぐらいの年齢の男子にとって女子は「敵」であるのだが、それでもエロいことには興味があるという二律背反のコロコロなりの解決

*2:時代ですな