大決戦!超栄光の14人プリキュア:「映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇蹟の大集合!」

 ようやく水疱瘡の治癒証明書をゲットしたので、息子と「映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇蹟の大集合!」を観にいった。そう、男二人でプリキュアだ。父と息子でプリキュアだ。キモいことこの上ないが、娘が「映画館は暗いからキライ!」と嫌がったので仕方ない。


 劇場はうら若き、若すぎる乙女達とその親御さん達で一杯で、我々のような父と息子の二人連れは皆無だった。というか、男児はいなかった。いや、戦隊やライダーなんかはわりかし女児がいるので逆もまた真なりと思っていたのだが、普通男児プリキュア観ないものなのかね。「ディケイドと、シンケンジャーと、プリキュアと、フレッシュプリキュア!」と叫んでいるうちの息子が齢二才にしてオタ臭いだけなのかね。そうかもね。


 だが、映画を観て驚いた。この映画、本当は男児というか男向けなんじゃないのか?最初から最後までバトル!バトル!バトル!とバトルの連続。まるで、インテリジェンス・ゼロな男のクソ餓鬼相手のジャンクフード映画理論をそのまま女児向けにスライドしてきたかのような内容で、劇場の椅子に座りながら腰が抜けた。私のような大きなお友達であるところの中年男は嬉しいけれども、メインの客である若すぎる乙女達はどうなのだろう。


 順にみていこう。

  • まず、舞台は昨年夏に超ウルトラ8兄弟が大決戦した横浜みなとみらい*1。ここでフレッシュ組とプリキュア5組が邂逅を果たす。お互い面識は無いはずなのに、まるでスタンド使いスタンド使いが引かれあうかの如く、意識しあうのぞみとラブ。
  • 次に、各番組に登場する不思議動物達が会議するという驚愕のシーンが続く。コイツ等全員知り合いだったのか!立花藤兵衛ことおやっさんが昭和のライダーで番組の枠を越えて出演するとか、最近の「戦隊VSシリーズ」で必ず「恐竜や」が言及されるのと似たシーンだ。
  • その後、バトルを挟みつつ、ナッツハウスやTAKO CAFEといったスナックアミーゴ的スポットを、プリキュア各組が番組の枠を越えて訪れるという展開が。ここいら辺は現在放映中の「ディケイド」を彷彿させるクロスオーバーだ。
  • ここまでが前半で、後半はこれ以上のアクションシーンのつるべ打ち。いよいよ再生怪人軍団ならぬ再生○○ナーと準主役であるプリキュア5組との本格バトルが始まるのだが、これが良い。等身大で巨大な敵と闘うプリキュア達の姿はまるでモビルファイターを素手で倒す東方不敗か閃光のアルベルトかといった演出だ。勿論、通常のテレビシリーズでも小さいプリキュアが巨大な敵と戦うというバトルはやっていたのだが、大きなスクリーンで動画枚数も多く使える映画版では俯瞰や仰角のカットが映えることこの上ない。
  • しかし、倒しても倒しても出てくる再生怪人軍団に苦戦するプリキュア5たち。ここで、これ以上ないというくらい絶妙のタイミングで先輩プリキュアが登場する。その頼もしさといったらネオショッカー大首領を倒す為に終結した7人ライダーのよう。登場時に大音量でそれぞれの番組の主題歌BGMがかかるさまは、「ウルトラマンメビウス」で先輩ウルトラマンが登場した時や、スパロボの戦闘シーンを彷彿とさせる。
  • で、最後は「みんな!オラ、じゃなかったアタシに元気をわけて!」の元気玉でラスボス撃破。しかもミラクルライトを用意することで、この「みんな」に劇場にいる観客も含まれるという念のいりよう。
  • スパロボといえば、本作のみのオリジナル主題歌が用意されるのもスパロボっぽい。またこれが、スパロボの主題歌を水木一郎堀江美都子が唄うが如く、無印やスプラッシュスターの主題歌を担当していた五條真由美が唄う、良い歌だった。ミラクル、みんな来る♪
  • 戦いが終わった後、14人のプリキュアが和気あいあいと過ごすという女児が喜びそうなシークエンスも、エンディングテーマの止め絵で済ますという割り切りぶり。これ、こないだの「ゲキレンジャーVSゴーオンジャー」と全く一緒だね!

 なにしろ相手は同年齢の男共に比べて精神年齢の高い女児だ。私には丁度娘と息子が一人ずついるので断言できるのだが、同い年の女児に比べて男児は馬鹿なんだよね。男のクソ餓鬼相手ならばとりあえずバトルの連続で、合間にうんこ・しっこ・まんこ・ちんこでも適当に混ぜておけば喜ぶが、女児はそうもいかん。もうちょっと知的に、文芸的に内容の濃いものにしないと乙女のハートは掴めない……と考えてると思ってたんだよね、送り手側は。
 「おジャ魔女どれみ」では、はづきたんとおんぷたんの冷戦や、ももこたんの帰国子女アナウンサーみたいな性格にイラつくはづきたんやおんぷたんの姿が描かれたりしていたし、予習として観た「Max Heart 2 雪空のともだち」では、「嫌なことをを言い合えるのが本当の友達!」みたいなことをやっていて、嗚呼女児向けアニメは知的だなぁと思っていたのだが。や、プリキュアは当初からバトルを重視していて東映特撮チックな要素があったのだけれども、とうとうここまで来たんだね。
映画ふたりはプリキュア MaxHeart2 雪空のともだち (通常版) [DVD]
東堂いづみ
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 でも、それが全然嫌じゃない私は、ライダーも戦隊もスパロボmpプリキュアも大好きです!やっぱりさ、リュミエール兄弟が駅のホームに迫り来る機関車の映画で観客をびっくりさせてからこちら、映画というものがイベントでお祭で見世物である以上、これは正しい方法論だな。
 最後の最後のクライマックスに、それぞれ違う個性を持った私たちがどうこう〜みたいなテーマらしきものを突然口にするけれども、唐突過ぎて半笑いになってしまった。いや〜、蛇足だろ、コレ。そんなに立派なテーマが欲しいのか。
 でも、ラスボスにやられても、「こんなところで倒れちゃいられない!だって、まだTAKO CAFEのタコ焼き、食べてないモン!」「私たちも、絶対にパンパカパンのチョココロネ食べるんだから!」みたいに復活するさまは、前半のパターンを一応伏線に活かしていて、結構上手いなと思いました。なるほど、これはバトルロワイアルを避けてゆったりまったりした日常を生きるという、ゆるやかで擬似家族的な地域コミュニティを基にした日常から自由な物語を掴み取るという、ポスト決断主義的生活を求めてるというわけですね、分かります。
 ……まぁ、それは冗談としても、次は「フレッシュプリキュア」単体での映画化らしいが、もっとこういう夢の共演をやって欲しいなぁ。


 ただ、4組のプリキュア達が夢の共演!という話を聞いた時には、もっとスパロボっぽいクロスオーバー的要素を大切にした映画になると予想していたんだよな。無印プリキュアスプラッシュスターの2組がお互いのキャラのカブりっぷりにびっくりするとか、キュアアクアキュアベリーがお互いを意識しすぎて変な行動をとるとか、シャイニールミナスにミルキーローズが「あんた、もっと存在感出しなさいよ!」と嫌味を言うとか、4組のプリキュアが(中学や高校の教室内でよくみられるような)なかよしグループ間闘争に明け暮れるとか、そういった展開を期待してたわけですよ。
 ほら、スパロボって、「逆シャア」のオトナになったアムロがシンジくんに説教するとか、ゴライオンとガイガーが同じ星で作られたとか、波乱万丈がダイターン3でブレーカー稼業に勤しむとか、が獅子王凱が司馬宙にサイボーグとしての志を説くとか、そういうのが魅力なわけじゃん。そういう、番組の垣根を越えた所で発生する面白さというものを、もう少し観たかった気がするな。
 前半、お互いのスナックアミーゴ的スポットを訪問するシーンはちょっとそういう魅力があるのだが、同じパターンを何回も繰り返しているような印象を受けるんだよね。


 アニメ技術的には、絵柄も等身も違う4組をどうやって共演させるのか気になっていたのだが、無印やスプラッシュスターの等身を上げたものの、名乗りや必殺技のシーンには昔のバンクフィルムを使っていて、基本的には「気にしない」という強気の方針らしい。まぁ、テレビ本編も時々これ何キュア?的な顔になる時があるもんな。


 ただ、最大の不満は、入場時にレインボーミラクルライトが貰えなかったことだ。
 息子は2才だったので入場料が要らず、自分用の大人券1枚のみで入場したのだが、もぎりの人に「大人にはあげられません」と言われてしまったよ。これ、東映というよりも劇場側の方針だよね?だって、この前「ドラえもん」をユナイテッドシネマで観た時は大人一人だったのにオマケの玩具貰ったもの。ワーナーマイカルのケチ!

*1:プリキュアで実在の場所がモデルではなくてそのまま舞台になるのは珍しい