魔法使いの弟子よりジャッキーの弟子:『ベスト・キッド』

ベスト・キッド』鑑賞。いや、面白かったわー。私は旧作の『ベスト・キッド』に何の思い入れも無い人間で、『4』の『天使にラブソングを』みたいなダンスシーンはヒドかったなー、くらいしか記憶に残ってないのだが、一方でジャッキー映画は大好きだ。


だからさー、歌多丸も『グラントリノ』との類似性を指摘していたけれども、「ジャッキー映画の系譜」としてみると面白いよね。


まず、主人公はクソ生意気な餓鬼。それも、若きジャッキーやサモ・ハン・キンポーどころの騒ぎではない。ラッパーにしてハリウッドのドル箱スターであるウィル・スミスとナイオビことジェイダ・ピンケット・スミスというセレブの息子であるからして、レベルの違う生意気さだ。当然、演技もウィル・スミスのそれを踏襲。監督に「ウィル・スミスほどの有名人と一緒に仕事をする気分はどうだい?」と真顔で聞く親父の自己主張の激しさを120%に受け継いだ演技を繰り広げる、当初は。


ところが、このクソ生意気なガキが中国という異郷に渡るという状況設定が面白い。母国、いやリアルではセレブな彼も、異国の地ではマイノリティ。しかも、肌の色が違うとか黒人だからという意味ではなく、同じ言葉を喋らず文化を共有しないという意味でのマイノリティだ。ここら辺、「バトルクリーク・ブロー」で異国の映画界に挑戦するも、全然駄目だったジャッキーと対応できる、というのはこじつけが過ぎるか。


でもさ、このクソ生意気なガキが、ジャッキーの下で礼節を知るんだよね。


思えば、若い頃のジャッキーは生意気な弟子だった。あ、映画の中での話だよ。
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肩まで伸ばした長髪で、それなりにムキムキな若弟子が、師匠の目を盗んで小さな悪事を働いて小金を稼いだり女にうつつを抜かしたり、そのせいでとんでもない借金を背負ったりこてんぱんにやられたり。しかし、心根を入れ替えて修行し、卑劣なライバルを打ち破る……というのが若かりしジャッキー主演映画の一つのパターンだった。これを、ウィル・スミスの息子が踏襲してるような気がするんだよね。


また、本作でジャッキーはウィル・スミスの息子にカンフーを教える傍らで車を修理しているのだが、ジャッキーが車好き(それも三菱車好き)というのは有名な話だ。
ジャッキー・チェン - Wikipedia
そのジャッキーにまさかあんな過去があったとは……(あくまでも映画内での話です)ちょっとだけ写る過去写真の中のジャッキーが、『ツインドラゴン』とか『デッドヒート』とか微妙な作品を連発していた頃の90年代ジャッキー風の髪型だったのを含めて、色んな想像をせずにはいられないエピソードであった。


で、そのジャッキーがウィル・スミスの息子を救い、自分も救われるんだよね。
パットモリタの弟子になろうとは思わなかったけれども、ジャッキーの弟子にはなりたいなぁ。


その後、ウィル・スミスの息子はカラテ大会ならぬカンフー大会に出場するのだが、オリジナル版と違って対戦相手が皆ウェイト的にも身長的にも上回ってる奴らばっかりなんだよね。前半の生意気さはどこへやら、彼らと相対したときに本気でビビってるような表情をするウィル・スミスの息子がまた良い。
でも、それは武者震いみたいなものであると了解できるわけよ。何故なら、ジャッキーに鍛えられ、カンフーに鍛えられたから。男が世界と対峙する時、これ以上頼りになるものがあろうか、いやない。


そんなわけで、最後にコブラ会の弟子達がああなるのは必定! 親父のウィル・スミスも今からでも遅くないからジャッキーに弟子入りすれば良いのに! そうすればこれ以上嫌われ者にならないのに! ……なんて思ったよ。



そうそう、世の中には「ベスト・キッドもの」という一大ジャンルがあって、その中でも悪役がヴァンダムな『シンデレラ・ボーイ(ノーサレンダーという名で再販もされたらしい)』とチャック・ノリス主演の『サイドキックス』は見る価値アリと友人が言っていたのだが、両方ともDVD未発売なんですな。
シンデレラ・ボーイ [VHS]
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ノーサレンダー [VHS]
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サイドキックス(字幕スーパー版) [VHS]
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でも、ビデオならアマゾンで1円とかで売ってる。
うーん、どうしよう?