タイタンvsタイタンぢゃ! :『タイタンの戦い』

タイタンの戦い』観てきたのだが、どこに出しても恥ずかしくないボンクラ映画って感じだったな。


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リメイク元であるハリーハウゼン版の『タイタンの戦い』は本当に大好きな映画で、あまり映画を観直すことのない私にしては珍しくも、十回以上は観たというお気に入り作品だ。というか、それ位頻繁にテレビ放送してて、その度ごとにしっかりエアチェックしていたのだ。
世の中的にいうとハリーハウゼンの最高傑作は『アルゴ探検隊』だろうが、自分としては『タイタン〜』だ。なんかね、この映画はハリーハウゼンの他作品と比べて、禍々しさが濃厚に漂っているというか、エログロ満載だと思うんだよね。
例えば、たった一つの眼球を使い回す魔女達。頭の蛇の動きが見事なばかりか、ついでに乳房まで放り出してるメデューサ。死の国の雰囲気たっぷりな渡し守カロン。いきなり喋り出す神々の石像。そして崖に磔にされるアンドロメダのエロさ。
最も印象的なのは腕を切り落とされるカリボスで、一緒に観ていた親父の「あの腕はディズニーランドのシンデレラ城の下にある売店で売ってるんだよ」という無責任な一言にえらく想像力を刺激された幼稚園児の自分だった。ハリーハウゼンのクリーチャーに対する愛溢れた描写も合間って、あの怪物達が世界のどこかに存在してるような気がしたんだよね。


で、リメイク版なのだが、「クリーチャーに対する愛が足りない」なんて評を事前に見かけたりしたものの、決してそんなことは無いと感じたよ。禍々しさは確かに薄れたけれども。


以下ネタバレ。


出色は巨大サソリで、『モンスターハンター』か『スターシップ•トルーパーズ』か『虫皇帝』か、それともインポッシブルのネタか、みたいな、小学生の妄想をリアルに映像化したみたいな完成度が見事であった。
しかも、タスケン・レイダーみたいな奴らが現れたと思いきや、魔法でサソリを操って、あろうことかサソリの背中に小屋建てて乗り物にしちゃうんだよね。この、デスピオンというかガイサックというか、ゾイド感覚みたいなのが楽しくて、脚を滑らす小技的演出やクライマックスでの再登場も相まって、クリーチャー愛に関してはリメイク版も負けてないんじゃないかと思ったよ。


あと、旧作に対する目配せも面白かったな。


旧作にはブーボというブリキ製のフクロウが出てくるのだけれども、我々ボンクラ映画ファンとしてはいかにも子供受けを狙ったマスコット・キャラクターが大嫌いなわけですよ。だから、『ファントム・メナス』でジャージャー・ビンクスがでてくるまでは不人気キャラNo. 1の座をイゥオ
ークと争っていたりした。
で、リメイク版なのだけれども、ブーボは何故か街の武器庫に放り込まれていて、「こんなん、いらんわ!」とか言って突っ返すんだよね。おお、挑発的だなと思ったよ。


あと、ペガサスが黒馬ってのも良い。旧作のペガサスは一頭を残して全部カリボスに殺されたという設定だった。それが、本作では何頭も草を食んでいる。あれどうしたんだろう? と思っていると、ペガサス達が落ち着かなさげに嘶く。そこへ、颯爽と舞い降りる黒いペガサス――黒王号か松風かといった貫禄だ。


旧作への目配せといえば、新キャラであるイオなんかまさしくそうだよな。ヒロインである筈のアンドロメダよりも美人で華があって美(熟)女で、おまけに最後○○○って、どう考えても「俺達これから新しいこと始めます宣言」に見える。


惜しむらくは本作、話というか脚本の出来がショボショボであることだ。旧作も決して褒められた出来ではなかったので、そこは大目にみようというところか。監督は二作目三作目を作る気満々とのことなので、そちらに期待したい。単にクリーチャーの出来が良い『パイレーツ・オブ・カリビアン』になるかもしれないけど。