心地よい悪夢:「真マジンガー 衝撃! Z編 on television」第1話「大団円」

 「マクロスF」からこちら、深夜アニメを観る習慣が無くなってしまったので危うく見逃しそうになったのだが、やっと観たよ、バンダイチャンネル*1。何がって、勿論「真マジンガー 衝撃! Z編」の第1話だよ!いや、なんだかわけが分からないけど、とにかく凄いもんを観た、観てしまった、いやさ目撃してしまったという印象だけが脳にこびりついて離れない、凄い映像作品だった。


 なんというか、これって夢に似ているなと思った。夢といっても若人が希望に溢れて語るそれではなく、布団の中でみるやつの方だ。それも、ホンワカした楽しい楽しい夢ではなく、10時間以上寝ると(私の場合)寝起き近くにみてしまう、前後の脈絡もないし、舞台も登場人物もポンポン変わるし、細部の記憶も薄れているのだが、とにかく凄いものをみたという記憶だけは残っている、いうなれば心地よい悪夢だ。みた後にドっと疲れがでる(10時間も寝たのに!)ので悪夢といえば悪夢なのだが、あまりにも凄いものをみたという記憶だけが残っているので、思わず二度寝してしまう、そんな心地よい悪夢。印象としては、そのようなものに似ていた。


 そういや、永井豪の漫画の大半も、そんな心地いい悪夢的なものだよな。親や先生の横っ面を思い切りブッ叩くとか、カブトムシの脚を遊び半分にモギとるとか、アリンコを虫眼鏡で焼き尽くすとかいったような、無垢な残酷さと快楽(エロス、と言い換えても良いのか?)の共存。「デビルマン」は上手く風呂敷をたたむことができたけど、それ以外の大半は「俺たちの戦いはこれからだ!」的に終わるのも共通している。その意味では実に本質をついた映像化だ。


 我々が映像作品に求めているものは大別して二つあると思う。一つは物語としての面白さ。もう一つは映像としての面白さだ。この二つのうち、どちらかに振り切った異形の作品というのも世の中には存在しているわけで、NHKでやっている朝の連ドラとか、三谷幸喜が監督した映画なんてのは、前者の方だけに割り切ったものだろう。
 で、「真マジンガー 衝撃! Z編」の第1話は、その逆なんだよな。とにかく、デカいロボットやら濃ゆい人物やらが続々と登場し、舞台は絶えず移り変わり、前後の脈絡無く印象的な台詞が虚空を舞う。これを潤沢な作画枚数と今川泰宏お得意のダイナミックな演出、つまり高いクオリティでやられるわけだ。これを快楽といわずして何と呼ぼう。実をいうともう3回くらい繰り返して観ちゃったのだけれども、まだまだ気持ちよく観ることができそうだ。


 ただ、ネットを彷徨すると、この第1話はどうも総集編的なものらしいという話も目にした。つまり、テレビアニメってのは常に予算やスケジュールとの戦いなわけだ。そこでクールの終わりとか年末年始なんかにこれまでの素材を編集するだけで済む総集編をやって、調整することがよくある。でも、「真マジンガー 衝撃! Z編」は第1話放送の段階から既に状況が逼迫している。そこで、放映前だけれどもこれまでに製作済みの素材を使用した総集編的なものを、「つかみ」や「予告」目的で本来の第1話の前にやる……みたいなことかもしれない。総集編じゃないけれども、第○話を第1話の前にやるというのは「Vガンダム」や「ウルトラセブンEVOLUTION」でもやった手法だ。


 そういうわけで、次回から普通のアニメになったら大いにガッカリするのだが、今川泰宏だけにそれは無いとも思う。
 やっぱり、期待してしまうのは「真ゲッターロボ 世界最後の日」のリベンジだよな。なんというか、「新ゲッターロボ」も「鋼鉄神ジーグ」もそれなりに面白かったけれども、お行儀が良すぎた感じが不満なんだよな。川越淳とは違うというところを見せて欲しい……いや、もう充分に見せつけてもらえたかも。


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