手塚治虫2009

 月曜からBSでやってる「手塚治虫2009 手塚治虫・現代への問いかけ*1」、今日は祝日だったのでたまたま観れたのだけれど、面白かったな。こんなに面白いのだったら月曜から録画してきちんと観ておくべきだったな。


 今夜放送していた第3夜はブラックジャックがテーマだったのだけれど、ゲストで登場していた海堂尊が一番好きなエピソードとして「未知への挑戦」を挙げるんだよね。
ブラック・ジャック (18) (手塚治虫漫画全集 (168))
手塚 治虫
4061087681


 医師であって、作家でもある海堂尊なら、もうちょっと違うものを選ぶと思ってたんだよね。例えば、、生命倫理や医療倫理に横たわる問題を鋭く突く「最後に残るもの」や「その子を殺すな!」や「二人のジャン」とか、ライバルキャラであるキリコもやはり医者であったという「死への一時間」とか、医療の限界を痛感させられる「ちぢむ!!」とか、「ブラックジャック」には世間的に名作と呼ばれる回は他に一杯あるわけじゃん。何しろこの「未知への挑戦」という回は、坊さんに頼まれて宇宙人(グレイタイプ)のオペをするのだが、血液が青かったりヒトにはない謎の器官があったりして苦労するという、医療知識を存分に盛り込んだトンデモギャグみたいな話で、手塚的にはどちらかといえば軽い笑いを生むことを目的としたエピソードだよね。


 でもね、海堂尊は言うわけですよ。宇宙人の治療なんて、本当に何でもありの、未知の領域だ。でも、医師にとって全ての患者はそれぞれ異なっており、診察前に(或いは診察しても)はっきりしたことは断定できないという意味において、実は、診療という行為は本質的に未知の領域に属している。そういうことを実感させてくれるという理由で、名エピソードである、と。


 もう私は目から何枚鱗が落ちたか分からないよ。これは、現実の特定要素を思いもかけぬ方向に強調するという点で、ちょっとSF的な発想だよね(手塚治虫の話の作り方ではなくて、海堂尊の受け止め方が)。海堂尊はSF書いてもイケるのではないか。


 で、最後、石田衣良が心に残る手塚作品として「奇子」を挙げていて、これもなるほどなーと思った。
奇子 (上) (角川文庫)
手塚 治虫
4041851297
奇子 (下) (角川文庫)
手塚 治虫
4041851319


 岡田斗司夫が先週の「ひとり夜話」で、手塚キャラの中で一番好きな女性として和登さんとボッコ隊長を挙げていて、手塚治虫のマンガに出てくる魅力的な女性キャラは皆頭が良くて芯がしっかりしてるから、幼い頃に手塚キャラをインストールされた自分は頭が良くない女性キャラに魅力を感じなくなったというような話をしていたのだけれど、良く考えてみれば手塚が書く女性キャラには「頭が良い」の他にもう一つあるのだな。「頭が良すぎて怖ろしい」というタイプが。奇子とか、「地球を呑む」のゼフィルスとか。
地球を呑む (1) (手塚治虫漫画全集 (259))
手塚 治虫
4061732595
地球を呑む (2) (手塚治虫漫画全集 (260))
手塚 治虫
4061732609


……「手塚治虫2009」再放送しないかなー。