陛下何やってんすか

イベントレポートばっかり書いてると、時事ネタが書けなくなるのが難点なのだが、気になった出来事はやはり書いておきたい。

天皇陛下は11日、東京都港区の東京海洋大品川キャンパスで開かれた09年度日本魚類学会年会に出席した。


陛下は大講義室で学生や研究者らと一緒に椅子に座り、「ミナミトビハゼとヨダレカケの比較骨学・筋学」「マレーシア産トビハゼの呼吸器循環系の構造」などの口頭発表を、休憩をはさみながら2時間以上聴き入った。その後、さまざまな魚類に関するポスターを観賞した。

http://mainichi.jp/select/wadai/koushitsu/news/20091012k0000m040024000c.html



上記画像なのだが、やはり凄い。凄すぎる。


まずさ、さかなクンハコフグ型の帽子が実は本体であり、下部の人間は寄生され、操られているだけである……というネタがあるじゃないですか。スライムナイトの本体は上部のナイトではなくてスライムだ!みたいなやつ。で、ついに今上天皇さかなクンの餌食になってしまったのか!みたいな笑い話的魅力が、まずある。


もう一つ、最も穢れしものは聖に通ず、みたいな言説があるじゃん。穢れた者と聖なる者は、通常の身分制度の外にあるという共通点があり、穢れを背負った者が神聖視されることもあった。
さかなクンというのは、論文なり文章なりを発表してはいるけれども、世間での扱いは研究者というよりオカマ口調で魚のことを熱っぽく語る芸人だ。彼はテレビやその他メディアにおけるパフォーマンスを生業としている。現在そう考える人は少数派だろうが、もともと芸人やオカマは冠婚葬祭で大活躍するアウト・カーストの職業だ。また、さかなクンの物腰と喋り口調は明らかに通常人と異なっており、「魚に詳しい」という文化人的要素を抜きにしても、彼をカースト外の存在と心理下でみなす人も多かろう。
神はカーストに属さない。そんなさかなクンの帽子を、かつて神と呼ばれた男の子孫が被ることに、一種の納得を感じるわけだ。



最後に、ネット上に元画像があることから、どう考えてもコラージュなのだが、もしかすると今上天皇は周囲の制止をふりきって本当にやっちまったんじゃ!みたいなドキドキ感もある。


ちょっと前の話だ。皇居の周りを散歩していたOLが、一人の老紳士に呼び止められた。道を聞かれたので答えると、次第に世間話のような感じになる。しばらくして分かれると、黒スーツに身を包めたむくつけき男達が慌てた様子で、背格好はこれこれこれ位の、70歳くらいの老人を見なかったか?と尋ねてきた……という都市伝説があった。
もう一つ、天皇がどこかの施設を表敬訪問された時のことだ。車を降りて建物内に入ろうとする天皇と皇后に向かって、一人の子供が駆け寄った。あわてふためくSPやお付きの人たち。だが天皇は彼らを制し、しゃがんで子供の背の高さに合わせると、にこやかに子供と話し始めた……という、これもまた都市伝説だ。


まぁ、後者の方はいかにもありそうな話ではあるのだが、ここで気づくのは天皇(に限らず他の皇族にも適用されるが)が、実は様々な自由を制限された存在である、という点だ。天皇に住民票は無い。選挙権も無い。雅子妃殿下も婚姻時に戸籍が抹消された。そして、天皇に発言の自由は無い。


歴史的にみて、天皇制というシステムは民衆統合の装置として利用されてきた。近世においてそれは特に顕著だ。
例えば、西南戦争後に天皇の権威が増加したのはそれなりの理由がある、という歴史的観点がある。西南戦争において西郷隆盛の為に死ぬ兵士はいても、大久保利通伊藤博文の為に死ぬ兵士はいない。それをよく思い知った大久保は、明治天皇天皇制というシステムを利用することで国民の人心を掴み、日本の近代化を果たそうとした。
昭和に入ってからも、それは同様だ。二・二六事件は「昭和維新」「尊皇討奸」を掲げたクーデターであり、天皇という権威の奪取が目的の一つだった。二年後の国家総動員法は政府が天皇の権威を使い総力戦体制を築きあげるものであり、天皇の名の下に資源を統制運用し、国民を戦地に送った。GHQ天皇制を維持することで、占領政策を円滑に進めた。それは現在においても同様で、「日本は神の国」発言等に天皇制というシステムを政治的に利用しようとする思惑の片鱗をみてとれるだろう。


それに対し、国民の味方ではあっても政治家の味方ではない歴代の天皇は、それぞれのスタイルで抵抗してきた。内閣誕生前は積極的に政局の主導権を掌握しようと働きかける明治天皇。祭祀からも世間からも引き篭もる大正天皇。決して言質を獲られぬよう、ニュアンスゼロのマジカルワード「あ、そう」を駆使する昭和天皇


それでは、今上天皇のスタイルとは何か。それは野に分け入り、自分の言葉で話すことだった。具体的にいうと、「さかなクンの帽子を被って魚類学会出席」というパフォーマンスであった……とかなんとか。