戦闘美少女と人外ロリ:『宇宙ショーへようこそ』

あんまりヒットしていないと聞くし、実際私が観に行った際は劇場に5人しか客がいなかったのだけれど、『宇宙ショーへようこそ』はこの夏一番のお薦め映画だと思うね*1。自分は『マイマイ新子』より面白いと思ったな。
プロットは単純で、田舎の小学生男女五人が子供たちだけの夏休みキャンプの最中、裏山で拾った人の良さそうな犬型宇宙人のお誘いで宇宙旅行に行くも地球に帰れなくなって云々という、すこしふしぎ感全開なもの。宇宙といっても、リアルな宇宙空間というよりは外国の隠喩で、月の裏側にヌケヌケと宇宙文明の大都市が建設されていたり、銀河鉄道で旅したり、件の犬型宇宙人の母星が完全にイギリスの片田舎だったりする。クリスタルポテトってなんじゃい!
これだけ書くと、児童向けのウェルメイドな夏休み映画のように思えるかもしれないが、実際は違う。『トイストーリー3』が大人向け映画であるのと同じく、『宇宙ショーへようこそ』は大人向け映画だ。ただ、大人といっても色々あるわけで、前者が子供を持った(もしくは子供を持ってもおかしくない)世代向けの映画であるならば、後者は子供時代を懐かしく振り返ってしまう人種に向けた映画といえる。それも、良い年こいた大人、というか大人になりきれない男、つまりは我々に向けた。

まずなにが凄いかって、本作は少女が自分よりも年下の少女、つまりは幼女を救う話なんだよね。常にボーイミーツガールに拘るジブリだったら逆立ちしてもこんな話作らないだろう。物語の役割的に女性蔑視をし続けてきたハリウッドも、こんな企画はまず通らない。唯一の例外として、キャメロンだけが『エイリアン2』にて少女を救う女性主人公というのをやったが、あれは母と娘(というか子供)のアナロジーだった。
本作はどこからどうみても少女が幼女を救う話だ。何故、少年ではなく少女なのか? 一言でいってしまえば、それが斎藤環のいう「戦闘美少女」であるからだ。深夜にテレビをつければ一目瞭然だ。最早、我々の体は美少女が美少女を救う話しか受け付けないんだよ!

4480422161戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)
斎藤 環
筑摩書房 2006-05

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これにプラスして、メガネに短パン、ちょいデブ、メカ好きという我々のような四重苦を背負った小学校低学年男子の淡い恋愛模様がサイドストーリーとして描かれたりする。相手は異星人の女の子だ。そう、ラムちゃんからベルダンディーを通過して長門有希まで、我々の大好きな人外少女だ。しかも2.5等身で、知り合うのはバイトに訪れたジャンク屋であったりする。
メガネ男子と人外ロリが出会ったら、恋に落ちるのに言葉はいらない。最後のお別れのしーんで、笑いながら涙をこぼす描写にはさすたの私もちょっとウルっときてしまったよ。上手いわー、ツボをつくのが。

そういうわけで、『宇宙ショーへようこそ』は完全にオタ向けのお話を一見して健全なジュブナイルに上手く偽装している痛快作だと思う。私は不勉強にしてこの監督の過去作を観たことが無いのだが、OKAMA湯浅政明といった真性変態がスタッフとして参加しているだけのことはあると思ったよ。
OKAMAX (Wani pix (001))
OKAMA
4898298346


ケモノヅメ DVD-BOX
B000NTQNOA


そういや脚本は「女は紙とjpgで良い」という名言もある倉田英之だった。いやー、 信用できる人達だよね!!
倉本 倉田の蔵出し
倉田英之 okama
4048671936


そうそう、監督の前作である『かみちゅ!』をチェックしようと試みるもDVD屋で探せなかったのは内緒だ。ひらがな四文字の美少女アニメって、なんでこんなに多いんだYO!

*1:だって皆、『トイストーリー3』は観るのだろうし