カーペットはクリーニングに出してます:新・のび太の宇宙開拓史

 もう「ドラえもん」は終わりなんじゃー!……と軽くパニックになりそうな出来だった「のび太と緑の巨人伝」から一年、「新・のび太の宇宙開拓史」を観てきたのだが、今年はそれなりの出来で、安心した。これなら来年以降もきちんとプログラム・ピクチャーとしてのドラ映画が続くよな。


 ただ、問題なのはこの映画の面白いところは全部原作漫画のそれに依拠していて、リメイクにあたって新しく追加した要素のほとんどがつまらない、ってことだろう。


 まずさ、ロップルくんの隣に住んでいたブブの代わりに、香里奈が声をアてるモリーナってゲストキャラクターが追加されたのだけれど、これはいるのかねぇ?私は香里奈が「深呼吸の必要」でいかにも沖縄にハマっていそうな若者を演じて以来、香里奈のことが大好きだし、香里奈とつきあいたいし、香里奈とセックスしたいと毎日考えているのだけれど、ドラえもんの映画で声優をやって欲しいとは思わないな。……「新魔界大冒険」の相武紗季の時も同じこと書いたような気がするな。


 こういう非声優芸能人が声をアてるという風習って、なんとかならないものなのかねぇ?彼らが参加すると雑誌やテレビ番組が取り上げてくれる率が高くなる、すなわちプロモーション効果を期待しての起用だと思うのだが、ここ数年の劇場版ドラえもんの場合はヒドすぎる。


……と、2005年の声優一新を境にグっと増加した。そもそも、ドラミ役の千秋ってプロモーションで役に立つという期待(打算)込みで起用したと思うので、2005年以降は4人とも勘定できる。来年もアイドル、芸人、年配の俳優か子役の中から3人プラス千秋が起用されそうだ。
 勿論、誰も彼も声優として未熟というわけではなく、劇団ひとり河本準一のようにプロの声優に混じっても違和感の無い人たちもいるわけなので、最終的にはキャスティングのセンスということになるのだろうが、こういうのはプロデューサーが決めちゃうんだろうな。今年は香里奈アヤカ・ウィルソンを出演させるよりも、もう一回船越英一郎ギラーミン役で起用する方が何倍も作品の出来に貢献できたと思うぞ。


 新キャラとしてのモリーナ追加は声優としての技量以外にも大きな問題があって、例えば最後の、7年間誰も発見できなかったモリーナの○○を偶然のび太達が発見するのは良いとしても、あっさり警察が発見するのはどうやねん?なんてのが沢山あった。
 脚本は「新魔界大冒険」と同じく真保裕一が担当しているのだが、そういや「新魔界」の時もリメイク版の追加要素として美夜子さんと美夜子の母の思い出が描かれたりしていたけれど、意外に引き出しが少ないのかしら?と思ったりしてしまった。
 まったく同じならリメイクする意味が無いので、新キャラ追加や演出の変更はガンガンやるべきだと思うのだが、センスが問われるところだよな。
 藤子・F・不二雄の原作も完璧というわけではない。例えば本作ならガルタイト鉱石で空を飛ぶという印象的なシーンを出しておきながら、以後全くそれが生かされないということがあげられる。これはSF作品におけるアイテムとしては「ジャイアントロボ(今川版)」におけるシズマドライブや「虎よ、虎よ!」におけるジョウントみたいな位置づけにあるものだと思うのだが、クライマックスで宙吊りにされた誰かを助ける為に使うとか、○○が宇宙船を動かす為に使うとか、そういう展開を期待していたんだよね。


 しかしまぁ、長々と書いてきてなんなのだが、こういうのは些細なことだよな。去年の声優云々なんて口に出す気にもなれないヒドさに比べたら、コーヤコーヤ星の美しい四季とか、原作準拠のキャラデザインとか、ロップルとチャミーの声優の上手さとか今年は楽しめるデキだったよ。漫画原作版には勝てなかったけれど、のび太ギラーミンの決闘を誤魔化した旧劇場版には勝ったと思うよ。


 来年はまたオリジナルでやるっぽいのだが、もうこれは興行とか配収のこととか全く考えずに、「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」や「GREEN vs RED」みたいな、シリーズにおける良い意味での問題作みたいなものを作った方が良いと思うな。シンエイ動画ならできる筈だ!というか、そういう飛び道具みたいなものじゃないと藤子・F・不二雄に永久に勝てないと本気で思う。勝とうという気があるかどうかは別にしての話なのだけれど。
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 実の所、本気で不満な点はメカデザインだ。私はゼロライナーのネタ元みたいなデザインのブルトレインが大好きで、流石大河原邦夫だよ!なんて思っていたのだが、「新」ではデザインが変更されてガッカリなのだ。
 でも、ガッカリしてるのは私だけかな……なんて思いきや、ホビージャパンの映画評でも同じことをいっていて、ちょっと安心した。いや、流石ホビージャパンだな!