ゾンビ映画としてのバイオハザード5が気になる子ちゃん

 私は初代「バイオハザード」を途中で放り投げだしたっきり、「バイオハザード」のバの字にも触れていないような人間なのだが、新作の「バイオハザード5」はちょっと気になる。


バイオハザード5(通常版)
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バイオハザード5
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 なにしろ、舞台はアフリカで、主人公は白人男(と黒人女)で、敵として黒人のゾンビが襲ってくるというではないか。「ゾンビ映画」というジャンルの始まりが「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」や「地球最後の男」にあることを考えると、これはえらいことだよな。
 「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のゾンビは、明らかに当時公民権運動で盛り上がっていた黒人、じゃなかったアフリカ系アメリカ人に対する白人富裕層というかWASPの不安や恐怖の反映であったわけだ。「地球最後の男」の二度目の映画化である「オメガマン」に登場する吸血鬼も同様だよね。よく出来たゾンビ映画というものはその時々の社会に不安や恐怖を反映であり、ゾンビは単なるモンスターではなく(ゾンビが単なるモンスターである映画を我々は「B級映画」と呼ぶ)虐げられし人々の隠喩であるであるわけだけれど、そのはじまりは黒人であったわけだ。


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ジュディス・オディア; デュアン・ジョーンズ; ラッセル・ストライナー; カール・ハードマン; キース・ウェイン, ジョージ・A・ロメロ
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 でも黒人が大統領になってしまった現在、アメリカを舞台に黒人の隠喩としてのゾンビが登場する映画を作っても、あまり意味が無い。そこに新しさは無いし、時代性もない。
 だから「ランド・オブ・ザ・デッド」や「アイ・アム・レジェンド」はグローバリゼーションの犠牲者の隠喩としてのゾンビを描こうとしていたと考えるのだが、上手くいってなかった。
 そこにきて、舞台はアフリカ、主人公は白人男、敵として黒人のゾンビが襲ってくる!これは期待しちゃうよね。


 つまりですな、現在の世界において、クーラーのきいた部屋でコーラやポテトチップスを食べながらゲームに興じられるような層にとっての恐怖とは何か?ということを描こうとしているのではないか、と思うのだ。


 我々が100円均一の回転寿司でお腹を一杯にできるのは、中国やインドネシアやアフリカの食品加工工場にて時給10円で働く人々がいるからだ。それはつまり、民主主義とか資本主義とか経済自由化とかグローバリゼーションとかいった言葉やイデオロギーを表に出しつつ、実質的には経済的な植民地として搾取しているからだ、というものの見方があるわけだよね。で、それは一面において正しくて、テロリズムという形で報復される不安や恐怖を実質的な宗主国に住んでいる我々は抱えているわけだ。
 で、「バイオハザード5」は、そういった不安や恐怖を、アフリカでの黒人ゾンビという形で描くという、これまで小説も映画もなしえなかった偉業をゲームという媒体で成し遂げようとしているんじゃないかと思ったのだ。


 ほら、「バイオハザード」にはアンブレラ社っていう巨大企業が生物兵器としてゾンビを作った、みたいな設定があるらしいじゃん(あんまりプレイしていないので憶測)。だからさ、生物兵器としてのゾンビの材料として誘拐される黒人とか、アンブレラ社員慰安の為の売春婦として作られた女ゾンビとか、コスト的に最強の生体兵器である子供ゾンビ兵とか、黒人と黒人ゾンビが争うのを指を銜えて見守るしかない国連軍とか、HIVならぬT-ウイルスが蔓延するスラムに建造されるピカピカのサッカースタジアムとか、日々搾取されていた黒人達がゾンビと化してピカピカなスタジアムやピカピカなオフィスやキミがゲームをプレイしているクリーンで快適なマンションに大挙して乗り込んでくる光景なんかを妄想するわけですよ!
 そういう「ダーウィンの悪夢」とか「ホテル・ルワンダ」とか「ブラッド・ダイヤモンド」ミーツ「ドーン・オブ・ザ・デッド」的風景が広がるんじゃないかと期待するわけですよ!
 相棒である黒人女は「男塾」の冨樫とか「キン肉マン」のミート君みたいな解説役だろうな、やっぱり。


 しかも前情報では「ブラックホークダウン」にインスパイアされたとかなんとか言ってるらしいじゃないか。あれこそどんなハイテク兵器も数で攻めてくる奴らには敵わないという、グローバル経済というピラミッドの上部に住む人々が下層民に対して無意識に抱いている恐怖そのものだよね。
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 海外では「Resident Evil 5は黒人差別よ!」なんて議論があるらしいが、馬鹿お前もっとゾンビ映画観ろよ、と。ゾンビ映画っつーものは、そういった差別意識を白日の下に曝しだす為に存在するジャンルだよ、伝統的に。ただ目の前にある人肉を喰らうだけのゾンビよりも、遊びでゾンビを殺したり無人のスーパーで万引きしまくったり最後に大活躍した黒人を撃ち殺したりする人間の方がよっぽど怖い存在ですよ!と訴えるのが真のゾンビ映画だよ、と。麻薬を一切画面に登場させないで麻薬の危険性を訴える映画が作れるのかよ、と。そういうのを全部ひっくるめたゲームになると思うんだよね。いや、さすがゾンビゲームといえばこの会社、カプコンだよ!「デッドライジング」でロメロにオマージュを捧げただけことはあるよ!
デッドライジング ゾンビのいけにえ
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もし、バイオハザードの舞台設定が1940年代の中国や朝鮮で、日本人の主人公が中国人や朝鮮人のゾンビをなぎ倒していくという内容だとしたら、日本の植民地支配の歴史からも、それが好意的に見られるとは思えません。

http://www.gamespark.jp/modules/news/index.php?p=5640


 馬鹿!何言ってんだよ!日本には731部隊という有名な人体実験部隊があったじゃないか!この部隊が実はゾンビを作ってました!みたいな、「葛葉ライドウ」ミーツ「バイオハザード」みたいなゲームをもしカプコンが作ったら、絶対売れること間違いないね!少なくとも私は買うぞ。そしてそのようなゲームが中国や韓国から好意的にみられこそすれ、反感をかうとは思えないね(国内からは「自虐ゲー」とか言われるかもしらんけど)。



……とまぁそんなわけで、「バイオハザード5」には期待大なのだが、ゲーム雑誌とか読むと私の妄想とは少々異なるみたいです。遺跡ステージって……、そこは「ダーウィンの悪夢」的なスラム街やゾンビ工場だろ!



 ただ、現在「Fallout 3」を満喫中なので、「バイオハザード5」の購入はもう少し安くなってからでも良いかもわからんなぁ。そういやこの「Fallout 3」に関しても核爆弾爆発クエストが日本版ではスキップされた件について山ほど語りたいのだが、もう随分長文になってしまったので、また後日。
Fallout 3(フォールアウト 3)【CEROレーティング「Z」】
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