ボンクラ映画・オブ・ボンクラ映画s『キック・アス』

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映画秘宝祭りで『キック・アス』を観てきたのだが、なんかもの凄い面白かったよ!


まだ日本公開前なのでなるべくネタバレ無しで書こうと思うのだけれども、『キック・アス』はボンクラ映画の中のボンクラ映画だと思うんだよね。


ボンクラ映画というのは何かっていうと、定義はいろいろできるけれども、ハイスクール・カースト制度でナードに属する冴えない男が劇中で何かをきっかけに成長し、ボンクラとは思えぬほど大活躍する話――という定義が一つできると思う。


でも、世の中にはもう一つのボンクラ映画があるんだよね。絶世の美女やキュートな幼女が腰を捻ってハイキックを繰り出し、モンスターやゾンビやエイリアンを残酷シーンてんこ盛りのアクションでぶっ殺しまくるという、そんなタイプのボンクラ映画が。
これは、「ボンクラ映画』というよりも「ボンクラが大好きな映画」と定義した方が良いかな。


キック・アス』はさ、この「ボンクラ映画』と「ボンクラが大好きな映画」の奇跡の融合だと思うんだよね。



キック・アス』の主人公は我々と同じボンクラだ。巨乳のおばさん生生やおっぱい放り出した南米原住民をズリネタにオナニーする冒頭から、我々は主人公に同族意識を禁じえない。畜生!監督マシュー・ヴォーンは嫁がスーパーモデルというリア充のクセに、なかなかやってくれるじゃないか!

そんな主人公は特に体が強いわけでもなく、特に頭が良いわけでも無い。事故で身体のあちこちに金属ジョイントを埋め込まれたり、痛みを感じない身体になったとするにだが、それらはあくまでギャグとして描かれる。主人公は最後まで肉体的にボンクラなままだ。
しかし、精神的には違う。
ヒーローになる前、主人公はカツアゲされたら即座に財布を差し出すボンクラだった。しかし、アマゾンで購入したとはいえ、スーツを着てヒーローになった主人公は違う。肉体的には弱いままなので、案の定街のチンピラごときにボコボコにされるのだが、その時こんなことを言うんだよね。


「お前らの暴力に黙ったままでいるのが嫌なんだ!」


これはボンクラなりの成長なんだよな。


緑色のスーツを着て、スーパーヒーロー・キック・アスとなった主人公の姿は、はっきりいって格好悪い。街を歩いているだけで爆笑ものだ。
でも、その格好悪さが格好良さに転じる瞬間がある。その瞬間にこそ、数々の映画でヒーローを演じたニコラス・ケイジやアメコミでしか成立しないヒーローであるヒットガールが――つまりは「ボンクラが大好きな映画」の登場人物たちが、主人公を助ける理由がある。
それこそが本作の魅力なのだと思う。


予告編で観た『Scott Pilgrim vs. the World』もそうなのだけど、アメコミやCGとの出会いにより、ボンクラ映画というジャンルが変わりつつあるのかも、などと感じたよ。


そうそう、予告編といえば、映画秘宝祭りではお目当ての『キック・アス』上映前に予告編を十数本も流したのだが、『マチェーテ』とか『巨乳ドラゴン』とか『ピラニア3D』とか、どれもこれもボンクラ映画で、よくぞここまで集めたものだと関心してしまったよ。ボンクラ・イズ・ビューティフル!