2009年の映画をふりかえる

ファイナル・フォーム・アタックライド!は・は・は・はてなダイアラー
というわけで、はてな村民の一人である私も、空中キャンプさんの「2009年の映画をふりかえる」に参加しちゃうぜ!


2009-12-17 - 空中キャンプ

1、名前(id、もしくはテキトーな名前)/性別

冒険野郎マクガイヤー(id:macgyer)/孤食系男子

2、2009年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください

カールじいさんの空飛ぶ家 [DVD]
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感想:ピクサーにとってのディケイド:「カールじいさんの空飛ぶ家」 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな

  • 『チェイサー』

チェイサー ディレクターズ・エディション【初回限定生産2枚組】 [DVD]
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感想:喰って生きるということ:「チェイサー」 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな

劇場版 虫皇帝 [DVD]
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感想:虫皇帝におれはなる!:「劇場版 虫皇帝」 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな


ゼロ年代ベストテンと全然違うんじゃないか!と言われそうだが、ゼロ年代を代表するような時代性に富んだ作品と、時代性に関係なくただ単純に私が好きで楽しめた映画は異なる、とお考え下さい。逆にいうと、両方で名を挙げた『チェイサー』は時代性を超越した名作だと思う。

3、2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください

カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭十数分、カールの喜びと悲しみに溢れた結婚生活を台詞無しのモンタージュで描写しきるシーン(というかシークエンス)。

4、今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか

遭難フリーター』の主人公を演じる岩淵弘樹
これは皮肉でも何でもなくて、自分撮りをするドキュメンタリーの場合、セルフ・ディレクションやセルフ・プロデュースの能力に優れている必要があり、『遭難フリーター』が傑作である理由の一つはそれが出来ているということだ。寝起きのボサボサ頭で納豆どんぶり飯を喰らうシーンなんて、本当に良く撮ったもんだと思う。

5、ひとことコメント

なんだかんだ良いながら、今年も楽しく映画を観ることができた一年だった。


個人的なことというか自分の映画鑑賞史的なことを書くと、『遭難フリーター』に代表される低予算ドキュメンタリーが、そこいら辺のシネコンでかかる映画の何倍も心に響くということを今年初めて実感した一年でもあった。だが、シネコンに客がガンガン入って邦画の裾野が広がったからこそこのような低予算ドキュメンタリーが世に出る一面もあるわけで、そこいら辺複雑な心持ちだったりする。


あと、仕事やら子育てやらで常に睡眠不足なせいか、平日に自宅でDVD鑑賞というのが完全に無理な体になってしまった。途中で絶対に寝ちゃうんだよね。でも、劇場だと集中するせいか大丈夫なわけで、映画は劇場が一番!というのをこんな形で実感するとは思わなかったな。学生の頃は小っこいモニターで観ても映画の世界に入り込めたのだが、やっぱり加齢と共に集中力が落ちているのだろうな。


ついでに2009べスト20は以下の通り。最初はベスト10だったのだが、思い余ってしまったのです。

  1. カールじいさんの空飛ぶ家』:ピクサーにとっての劇場版10作目を祝祭する、記念すべき一本。”その気”になりさえすれば、どんなに年老いても新しい冒険を生きられる、というメッセージも力強い。
  2. 『チェイサー』:韓国映画の覚悟に頭を垂れたくなる一本。初監督作にして、監督の年齢が自分とあんまり変わらないというのがまた!
  3. 虫皇帝』:映画というのは結局どこまでいっても見世物以上でも以下でもない。そして本作で描かれる本当の「死」に、ボンクラ男子のハートはクライマックス!そんな映画。
  4. 母なる証明』:大方の観客の予想を超える展開、既存の映画文脈を飛び越える演出、きっちり回収される伏線。そして意地悪く挿入されるギャグ。けなしようがない映画。
  5. レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』:身も蓋もない事柄を、身も蓋もある演出で映像化した傑作。皆、もっとサム・メンデスを褒めてあげて!
  6. フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい』:映画が観客を救う物語は数あれど、観客が映画を救う物語は実に少ない。いわんやアニメ映画おや。『トイストーリー』を軽く越えた一本。
  7. ウォッチメン』:色々不満はあるけれど、こんな風に映画化してくれただけでお疲れ様と言いたい。原作の邦訳が再発されるのは予想していたが、『フロムヘル』や『トップ10』の邦訳が出たのも嬉しかった。
  8. あんにょん由美香』:林由美香のことなど好きでもなんでもなかったのだけれど、その向こう側にある「映画愛(これには勿論「AV愛」や「ピンク映画愛」も含まれる)」には共感しまくる一本。
  9. 『ディア・ドクター』:西川美和の上手さ+笑福亭鶴瓶の魅力にヤラれた。
  10. 『ベンジャミン・バトン 数奇な人』:民族が違っても、世代が異なっても、そしてCG技術が上がっても、やっぱり、我々が共感できるのは「愛」と「死」だけなんだよ!ということを実感する一本。
  11. サマーウォーズ』:真の意味で宮崎駿の後継者たりえるのは、スタジオジブリからNO!をつきつけられた細田守だけ!
  12. 『スラムドッグ$ミリオネア』:ダニー・ボイルってこんなにもポジティブだったっけ?と驚く一本。カオスとエネルギー溢れる『スラムドッグ』世界のインドに行きたくなる。
  13. イングロリアス・バスターズ』:メタ映画として最高なのだが、戦争映画としてセールスされていることが不幸の一語に尽きる。
  14. 『犬と猫と人間と』:犬猫を写しつつ、人間社会を照射する構造を評価したい。一方で、この映画に出てくる若者になら日本の未来を任せても良い!という気分にもなった。また、パノプティコンの虜囚たる"しろえもん"に現代人の姿をみたりもする。本作鑑賞後は当然『虫皇帝』のDVDを観て、「人間って勝手な生き物だなぁ……」とひとりごちるのが吉。
  15. SR サイタマノラッパー』:宇多丸ならずとも号泣メーン!と叫びたくなる一本。みひろ主演作を借りにレンタル屋に走ったりもした。
  16. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE』:昔好きだった女子が完全なるオトナになって帰ってきたような映画。でも、こっちはまだまだ子供なのでそのオトナっぷりに戸惑いもしたり。
  17. 南極料理人』:女子にとってのパラダイスは『かもめ食堂』だが、男子にとってのパラダイスは部室であるということを白日の下に晒した映画。タダ酒、タダ飯、そして南極という名のホモ・ソーシャル環境!あとは肉欲を満たす存在としての無個性女子(つまりは南極一号)さえいれば完璧なのだが、一応ファミリー向けの体裁なので、それは無し。
  18. ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』:このCG全盛期にあって、ジャバ・ザ・ハットの宮殿を凌ぐレベルでラテックスの匂いが漂ってきそうなクリーチャーの作りこみが嬉しい映画。バリー・マニロウの唄に全非モテ男子が泣いた!
  19. 『新宿インシデント』:生き残る為、新大久保で盗みを働き、他人を殺し、女を買うゼロ年代のジャッキーが放つメッセージ、それは「どこの何人でも、良いヤツは良いヤツ、悪いヤツは悪いヤツ」という実にジャッキー的なものだった。
  20. 『ダンプねえちゃんとホルモン大王』:この前伊勢田勝行の新作上映会に行ったのだが、「伊勢田作品を楽しめる皆さんなら絶対に楽しめる作品です!」との紹介に大爆笑。小手先のテクニックや豊富な予算やよりも、溢れる映画愛の方が大事なのだということを非エドウッド的手法で示した一本。


以上。
ただ、実をいうと『くもりときどきミートボール』『愛のむきだし』『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』『戦場でワルツを』『マイマイ新子と千年の魔法』等々の注目作を見逃してしまっているわけで、そこら辺は冬休みを利用して補完しようと考えている。でも、その前に押井守の『アサルトガールズ』を絶対に観なければ!!