おれもおまえも名も無い花を:『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』

コミケに来てくれた方々、ありがとうございました。おかげさまでよく売れました。次回は個人名義で出ようかなとも妄想しております。どんな本だすんだ、という話でもありますが。



さて、色々とヤボ用があって、約一ヶ月ぶりの更新だ。更新を休んでいる間、色々と面白い映画を観た。『50/50』も『コンティジョン』も『リアル・スティール』も『宇宙人ポール』も『琉神マブヤー』も『哀しき獣』も面白かった。『ヒミズ』に関してはちょっと書きたいこともあった。でも、やはり一番書きたいエントリから書こう。『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』超面白かった!


海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE コレクターズパック【Blu-ray】
B006G9R8ZO

スーパー戦隊シリーズは『ゴーカイジャー』で35作目、『ギャバン』は30周年目、そして、5歳の息子がいるおれは36歳だ。そこに『ゴーカイジャーVSギャバン』ときたもんだ。どこをどう考えても子供とその親をターゲットにする東映お得意の、二兎を追って「大きなおともだち」という三兎も得ちゃおうぜ的発想から作られた映画なのだが、はっきりいって抵抗できない。客よし・店よし・世間よしの三方よし映画であった。


まず、56歳になった大葉健二がとにかく格好良い。最近の東映特撮に出演するイケメン俳優には無い魅力が一杯だ。思えば30年前も、決して二枚目でもハンサムでも無いが、確実に子供たちの味方オーラを放っていた大葉健二のアニキっぷりにヤラれていたものだった。あの時二十代後半だった大葉健二いやさギャバンが、50代になるとこんな格好良いオヤジになるのか。変身ポーズがキマっているのは当然だが、声を上擦らせながらのちょっとおどけた演技も魅力たっぷりだ。


で、映画本編なのだが、なにが良いって、魔空空間への行き方だ。
ネタバレも何もないお祭り映画だと思うので書くのだが、途中、ギャバン魔空空間あるという監獄に囚われちゃうわけだ。魔空空間にどうやって行けば良いんだ? という段になって登場するのが曙四郎と青梅大五郎。勿論、大葉健二による一人三役だ。視聴者とテレビの間に存在するキャラである伊狩鎧が「全然別人じゃないですカー」と台詞白々しいを吐くのが堪らない。
で、二人はなんとバトルケニアとデンジブルーのレンジャーキーを使えば魔空空間に行けると教えてくれるのだな。設定的に良く分からないのだが、東映特撮を36年見続けてきたおれにはその理由が分かりすぎるほど良く分かる! そうだ! バトルケニアとデンジブルーの力を使えば、胸のエンジンに火をつけられるんだ! 男だったらぐずぐずすんな!


また良かったのが、ゴーカイレッドことマーベラスが幼い頃ギャバンに助けられていたという設定だ。書くまでもないことだが、これはおれたちおっさんが幼い頃『ギャバン』に一足お先に救われたってことなんだよ! 幼少期のマーベラスを演じているのがジャンボーグAの操縦者こと濱田龍臣ってのも気が利いていた。


それでもって、マーベラスは「ギャバンはおれの原点だ」なんて台詞を吐くんだよ。そうだよ! おれたちにとって、スーパー戦隊の原点は『ゴレンジャー』や『ジャッカー電撃隊』というよりも『宇宙刑事ギャバン』なんだよ! Twitterで指摘があったのだけれど、上原正三によるトラウマ脚本、胸の熱くなる宙明サウンド、そして全然イケメンじゃないけどおれ達の大好きだった大葉健二が、戦隊からメタルヒーロー・シリーズに移籍したような感じだったのも大きかったと思う。
また、本作は魔空空間からの脱出シーン等々、スローモーション・シーンの数々が格好いいのだが、マーベラス大葉健二がスローモーションで抱き合うシーンは濃厚すぎて、お前らホモかと思ったよ。おれもおまえも名も無い花を踏みつけられない男同士! 決して正面から見つめあわず、常に背中越しに語り合う二人。何故なら、見つめあうと抱き合ってしまうから! 嗚呼、ジョン・ウーといいジョニー・トーといい深作欣二といいキャスリン・ビグローといい、良い映画ってのは男同士の友情や敬愛が濃厚すぎて、ホモ臭が漂うもんだよね。


というわけで、当然のようにかかるレーザーブレードのテーマ、えらく気合の入ったアクション描写、荒川稔久ゆかりの囚人達、何故か悪役を演じる佐野史郎なんかも含めて、作り手の気合が伝わってくる映画であった。
自分としては井口昇による『電人ザボーガー』よりもグっとくる大葉健二祭りな映画だったよ。同じような演出――東映特撮史を俯瞰して語る演出はディケイドの『MOVIE大戦2010』オーズの『オールライダー』でもやっていた*1のだが、どんどん上手くなってると感じたよ。光の速さで明日へダッシュだ! こうなるとどうしても宮内洋祭にも期待してしまうなぁ。

*1:あれはささきいさお祭りだったなぁ