何故AKBは彼氏を作らないことを公言するのか:「いいひと」戦略

ふう。約二ヶ月ぶりの更新だ。
某仕事がちょっと忙しかったのでブログの更新をしないでいたのだが、それも一段落したので、そろそろ再開しようかと思う昨今である。「おまえのブログがなかなかメジャーになれないのは更新頻度が低いせい」などと言われたので、せめて週二回くらい更新できると良いなぁ。


で、某仕事というのは社員が社長である岡田斗司夫に一万円払うというカルト宗教みたいな会社FREEexでの仕事なわけなのだけれど、更新停止中に自分が携わった書籍が出版されたので、裏話など交えつつ紹介したい。


超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略
岡田 斗司夫
4838724063

本書は以前リライトに参加した『評価経済社会』の続編だったりする。
高度に情報化した社会では100円貰うよりも100回リツイートされたり100「いいね!」貰う方が価値がある――というのが『評価経済社会』の内容だった。
それでは、そのような社会で具体的にどう生きていけば良いのか? 一番確実なのは「いいひと」として見られるように振舞うことでは? ――というのが本書の概要だ。
ここで重要なのは、「いいひと」と括弧付きで表記してあることだ。つまり、ナチュラル・ボーンな「いいひと」である必要は全然なくて、あくまでも「いいひと」として戦略的に振舞うことが重要となる。高度に発達した情報化社会では本当のいいひとと戦略的に「いいひと」として振舞う人間の区別がつかない……なんつってな!
ネット上で「いいひと」として振舞うことの重要性は、Twitterで@つき投稿をリアルで一回も会ったことない人と何度もやりあったり、昨日初めて会った人のFaceBookの投稿に「いいね!」を付けたりする人にとっては、感覚的に理解して貰い易いことと思う。ネガティブなことばかりツイートしてる「イヤな人」はTwitterでもFaceBookでもあんまり相手にされないし、リプライを律儀に返す「いいひと」はそれだけ「評価」が高くなる。
だから、「イヤな人」になる努力を辞めて、他人をフォローしたり共感したり褒めたりしよう……ということをツール形式で紹介するのが本書の肝になるわけだ。



本書は、まず岡田斗司夫の講演を文字起こしするところから始まった。これを、もう一人のライターである批評のヒロユキ通称ヒヒョユキくんと一緒に文章としてまとめ直したり、不足している具体例を追加していくのが自分の仕事だった。
講演は二回分ほどあったのだけれど、書籍にするには数万字ほど足りなかった。全体の構成は講演の段階で既に確固としたものがあったのだけれど、具体例が足りなかった。そこで、ヒヒョユキくんと夜な夜な打ち合わせしたり、FREEex内部で行われた勉強会にてアイディアを募集したりすることで具体例を追加していった。
正直な話を書くと、最初は、岡田斗司夫の書籍で一番売れた『いつまでもデブと思うなよ』や『オタクの息子に悩んでます』みたいに、岡田斗司夫の冒険譚みたいなストーリーを裏に仕込む形でまとめようと思ったんだよね。それまでオタク大賞やロフトのイベントで辛辣な発言を繰り返すほど「イヤな人」だった岡田斗司夫が「いいひと」の重要性に気づき、変わっていく。『いつデブ』でメロンパンをみて泣いたのがターニング・ポイントになっていたように、伊集院光がラジオで『いつデブ』を取り上げた時とか、それを『ひとり夜話』で言及した時とか、それ以外の何かがきっかけて泣く……みたいな。
いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)
岡田 斗司夫
4106102277
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
岡田 斗司夫 FREEex
4344982789
でも、残念ながら岡田斗司夫本人に却下された(詳しくはヒヒョユキくんが書いてくれたここを参照)。そこで、またもやヒヒョユキくんと夜な夜な相談しつつ、違う事例で埋めたのだ。


自分とヒヒョユキくんの考えでは、お笑い芸人や政治家やニートといった、メディアを有効に使うことがサバイブと結びついている職業の人々は、我々一般人よりも先行して評価経済社会を生きている。芸能界や政界でのランクと年収の多寡は相関しない。ニートなら尚更だ。だから、芸人や政治家やニートは「いいひと」戦略を自然ととるようになる。
そういうわけで、主にヒヒョユキくんが芸人、自分が政治家とニートの事例を加えていくことにした。有吉弘行の『嫌われない毒舌のすすめ』やアンジャッシュの渡部の『ホメる技術』の参照、ニクソンチェッカーズ演説やリチャード・セネットやニートのphaさんやギークハウスやクラウド市民の達磨さんの紹介といった箇所だ。まぁ、ギークハウスの住民はニートばかりといったわけじゃないし、達磨さんはニートじゃないけどね。
で、その後岡田斗司夫のチェックを受け、出版されたというわけだ。この段階で不要な要素は削除される……と思っていたのだけれど、ほぼ全ての追加要素が残った。まさかカラスヤサトシや『男はつらいよ』やAKBへの言及までそのままだとはなぁ。
しかも、本エントリを書くためにチェックしたら、AKBが彼氏を作らないことを公言する理由まで説明してる。

ハイパー情報化社会以前なら、隠し通すことができました。
最近、中年のおばさんになった元アイドルが「実はあの頃、彼氏がいました」と告白していました。当時ファンだった男性にとってはさぞかしショッキングだったことでしょう。
現代のアイドル、たとえばAKB48のメンバーだったら、こっそり彼氏を作ったりするなんてことができるのでしょうか?
おそらく、難しいでしょう。TwitterFacebookといった、情報を一瞬で共有できるインフラが整っている今では、誰もが週刊誌の記者のようなものです。アイドルが名も知らぬイケメンとラブラブな現場を見かけたら、きっと写真付きでツイートすることでしょう。バレる確率は昔よりもずっと高くなっています。
陰でこそこそ付き合ったりするから、週刊誌にスッパ抜かれて大騒ぎになる。Twitter2ちゃんねるには「あの子だけは信用していたのに……」「裏切られたYO!」と書かれることになる。
だからアイドルを抱える芸能事務所は彼氏ネタに対して神経質になります。アイドルの口から「彼氏? いませんよ」と言わせることになる。AKBは彼氏を作らないことを公言していますが、あれは昔のアイドルよりずっと強い意味が込められているのです。
表のキャラと裏のキャラに大きなギャップがある人は信頼されません。どちらが本当のキャラか判別がつきません。だから堀江さん(堀江貴文)は、あえて自らの性癖を暴露し、リスクヘッジをしながらキャラを統一しているのだと思います。
表での活動と同じように、裏でこっそりやっていた行為もいずれはバレてしまうのです。これからは、「本音と建て前を一致させる」生き方にシフトチェンジしたほうが、ずっと生きやすくなるはずです。

そういうわけで、アイドルもファンにとっての「いいひと」にならざるをえない。
なんてタイムリーな話なんだ!
自分が書いたことながら、勉強になるなぁ……というステマを最後に本エントリを終わりにしたいと思います。