『総天然色ウルトラQ』BD発売記念オールナイトイベント“たいせつなことはすべて怪獣がおしえてくれた観覧レポート

『総天然色ウルトラQ』 Blu-ray BOX ?<最終巻>
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先週末は町山智浩帰国に合わせた町山祭りみたいな状態で、自分もロフトに行ったりUstを観たり花見に行こうかどうか迷ったりと、ファンとして堪能してしまった。祭りの一イベントとして、みうらじゅん町山智浩トークライブつき『総天然色ウルトラQ』BD発売記念オールナイトイベント“たいせつなことはすべて怪獣がおしえてくれた”も観覧してきたのだが、たいへん面白かったので軽くレポートしてみたい。


町山智浩といえば、現在では映画評論家やコラムニストとしての顔が有名だが、相当な特撮オタとしての顔があることも一部では有名だ。
その昔、『怪獣学・入門!』という名著があり、呉智英島田裕巳切通理作といった面々が執筆したあまりにも濃すぎる記事と、自分も違和感を持っていた『ウルトラマン研究序説』をへの反発と嘲笑を述べるあとがきに胸を熱くしたものだが、それを書いたのが編集を務めた町山智浩だった。
『平成オタク談義』で一番の怪獣知識を披露していたのも町山だった。ここで町山智浩という人物を認識したなぁ。


一方のみうらじゅんといえば、町山の「師匠」でありつつ、日劇前のゴジラの人形を盗み、『長髪大怪獣ゲハラ』のシナリオを執筆するくらいの怪獣通だ。
この二人のトークイベント付きなら、面白いに違いないと思ったのだな。


トークライブはみうらじゅんが幼い頃にやっていた怪獣スクラップブックをスクリーンに大写ししながらのスタートとなった。
300冊を越えるというみうらのエロ・スクラップブックは有名だが、エロの前は仏像スクラップ、その前は怪獣スクラップをやっていたのだという。で、今見返すと怪獣の中にエロ要素が入っているのだそうだ。怪獣図鑑を切り取るのは勿体無さ過ぎるので、新聞記事やプラモの箱からの切り抜きなのだが、『ウルトラQ』初放送時に「ついにテレビにも怪獣進出!」なんて見出しがあり、歴史資料として面白い。
初めて会った人には三種類あるスクラップブックのうちどれかを見せてあげるのだが、町山と会った際「こいつは“怪獣”だ! だって白いオーバーオールなんて着てるもの!」とピンときた……という話は以前ラジオでもしていたなぁ。


『総天然色ウルトラQ』Blu-ray BOX ?
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今回、『ウルトラQ』のカラー化に合わせてBDやDVDをコレクションするチャンス……というか、こういう仕事をすると貰えたりするから嬉しい! という話には笑った。なんでもみうらじゅんはVHS、LD……としっかりソフトを買い続けていたそうなのだが、最近の引越でDVDボックスが離散してしまったのだという。「ほら、家を分けたからさ!」嗚呼、長い人生にはそういうこともあるよねー。


みうら曰く「『ウルトラQ』カラー化でこういうイベントがあって、こんな大画面で観れるなんて単純に嬉しいことだと思うのだが、世の中にはこれを許さない人がいて、こないだも泉麻人と大喧嘩した。当然泉は否定派。死ねばいいのに」という話にも笑った。というのも、自分も『ウルトラQ』カラー化なんて『スター・ウォーズ』3D化と同じくらい意味無いじゃん! なんて思ってたからだよ!



その他、途中で品田冬樹トークにまざりつつ、印象に残った話を箇条書き

  • 「大村千吉はいつも怪獣を第一発見して気がふれるおっさんを演じている」
  • 「群馬では本当に隕石をガラダマと呼ぶものだと思ってた」
  • 「カラー化には3年かかった。常時800人くらいの人間が作業してた。日本・アメリカ・インドで作業していたのだが、ナメゴンの卵がえらいカラフルな色使いになって、これは違うと駄目出ししたりした」
  • 「イタチ少年はその後ダリーやガンダーのスーツアクターを務めたりした」
  • 「『バルンガ』の脚本を書いたのはプロデューサーの知り合いだった在野の人(虎見邦男)。ウルトラシリーズではこれと『散歩する惑星』の原案しか担当していない」
  • 「(みうら)生まれた年にやっていた怪獣映画が干支だと思う。自分はバラン年」「(町山)自分はキンゴジ年」「(品田)僕は日本誕生年……」

なんてのには爆笑。ちなみに自分はメカゴジラの逆襲年。


みうらと町山それぞれのベスト10も発表

  • みうらじゅんベスト10
    1. 『ゴメスを倒せ』
    2. 『ガラダマ』
    3. 『東京氷河期』
    4. 『ガラモンの逆襲』
    5. 『2020年の挑戦』
    6. 『宇宙からの贈りもの』
    7. 『五郎とゴロー』
    8. 『悪魔ッ子』
    9. 『マンモスフラワー』
    10. 『変身』
  • 町山智浩ベスト10
    1. 『育てよ!カメ』
    2. カネゴンの繭』
    3. 『地底超特急西へ』
    4. 『バルンガ』
    5. 『ガラモンの逆襲』
    6. 『宇宙指令M774』
    7. 『2020年の挑戦』
    8. 『東京氷河期』
    9. 『あけてくれ!』
    10. 『206便消滅す』


みうらは結構オーソドックスなセレクションなのに比べて、町山のベスト10はSF色やジュブナイル性が濃い。放送時、みうらは小学生で町山は3歳、セレクションには年齢が影響してるのかも、とのこと。町山は鼻水を啜り上げ「てやんでえ!」なんて台詞が口癖の子役が出てくるのが同年代として嬉しかったそうだ。


で、この結果を受けて、上映されたのは

  • 『ゴメスを倒せ』
  • 『地底超特急西へ』
  • 『宇宙からの贈りもの』
  • 『育てよ!カメ』
  • 『バルンガ』
  • 『ガラダマ』
  • 『東京氷河期』
  • カネゴンの繭』
  • 『ガラモンの逆襲』
  • 『2020年の挑戦』

の10本。


途中で気を失ったりもしたのだが*1、実際に今観てみると、えらい凝った画作りに驚いた。タイトルバックも音楽も一話ごとに変えるばかりか、きっちり映画的な映像を撮ろうとしているのがよく分かる。カラー化と大画面により、白黒テレビ画面*2だとよく分からなかったしないピントによる演出も、はっきりと分かるようになった。
町山も言及していたのだが、『育てよカメ』や『カネゴンの繭』といった子供が主役のエピソードは、今観ると音楽や編集がフランス映画みたいだった。時期的にヌーベルバーグの影響をモロに受けているのかもしれない。カラー化によって『地底超特急西へ』がえらく格好よくなっているのにもびっくりしたが、『バルンガ』があんなにも凶悪な話だったのにも驚いた。ああいう厭世的な台詞を呟く博士って、平成シリーズだと「実はいいひと」的ストーリーラインに回収されてしまいがちだが、最後までキャラがぶれない。いや、いい話ですよ。


やっぱり、こういった全く違う話が1シリーズの中に収まっている多様性が、初期ウルトラシリーズの魅力なのだなと改めて思った。
そういうわけで、平成シリーズの中でも、この多様性を受け継いでいる『ウルトラマンマックス』が自分のお気に入りだったりするのだが、先日の『ウルトラマンサーガ』におけるダイナやコスモスみたく映画で復活なんてしなさそうなのが悲しいところだ。
あと、久しぶりのオールナイト、それも観客が大勢いるオールナイトってのは楽しいもんだよな、とも実感した。「私はカモメ」で爆笑なんて、家でひとりきりじゃ絶対ありえないよ。黒沢清がいうように、こういうのが「映画を観る」という行為の醍醐味なのだと思う。『ウルトラQ』はTSUTAYAの棚のカテゴリでは映画ソフトじゃないけれども、大勢の前で上映される時、自分が笑ったと同時に誰かが笑った時、或いは笑わない時、それは映画なのだな。

*1:なにせ仕事帰りのオールナイトだったもので、

*2:なにせ以前観たのは大型液晶テレビじゃなくてブラウン管だ