水着でイチャつくリア充皆死ね、でもおっぱい一回触らせて:『ピラニア3D』

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結局今年の夏は家族旅行以外の旅行に行けなかったのだが、少しでも夏休み気分を味わおうと『ピラニア3D』を観にいった。いやー、最高の映画だったよ! 『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』の冒頭にて、ロージー・ハンティントン・ホワイトレイのケツが3Dでプリプリ飛び出す映像を観て「どうかしてるぜ!」なんて思ったのだが、いやいやマイケル・ベイはまだまだ上品だったと思わせてくれる映画であった。



本作、ジャンル分けすればモンスター・パニックものの分類に入るのだろうけれど、何がすごいってジャンルものに要求されるものが全て入ってることだと思う。しかも120%の過剰さで。ジョーズにケンカを売る冒頭。ボンクラ童貞な主人公。頼りになるのかならないのか分からない警察。事態の異常さに気づく科学者。過剰な演技のマッド・サイテンティスト。ムカつく友人に水着でイチャつくリア充――当然のようにガンガンに食い殺されるリア充たち。肉と骨と皮の質感がきちんと描き分けられ、ヒトの肉体が子供の玩具のように扱われる人体破壊シーン。そして女の裸におっぱい。主人公の母親までおっぱいデカいという過剰さだ。誰も頼んでいないのに!


特に良いのは3Dの使い方だよな。おっぱい3D、裸体3D、切株3D、人体破壊3Dまではまだ分かるが、まさかちんこ3Dまでやってしまうとは……誰もが一度は妄想した映像を、現実にやってしまうアレクサンドル・アジャの実行力に乾杯だ。
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そういう意味では、ゲロ3Dも同様の実行力の産物だろう。や、ゲロ3Dは『ジャッカス3D』という前例があるが、本作のゲロはCG! 世界で最もくだらないCGの使い方はこれだ!
ゲロ吐きシーンといえば、普通の監督なら俯瞰で便器に顔をつっこむ構図で見せたり、トイレのドアを挟んで音だけ聞かせてすませるものだ。だからこそ、口から流れ出る吐瀉物が床や便器に落ちるまでを1カットで撮る映画は、映像で物語を語る方法が分かっている作り手が撮っている名作といっていい。『スタンド・バイ・ミー』『ショーガール』『スターシップ・トゥルーパーズ』『ブラックブック』……なんかバーホーベンの映画ばかりな気がするが、バーホーベンは世界で一番偉大な映画監督なのでしょうがない。最近じゃ『スーパー!』もそうだった。『ピラニア3D』はそういった名作群に連なる映画なのだな。ウンウン。



ただ、ジャンルもののお約束をいくら並べても、衝撃シーンをいくらクオリティ高くやろうとも、良い映画にはならない*1。やっぱり映画には、作り手の情熱とか、情念とか、やむにやまれぬ思いとかいったものが重要なんだよな。
そう考えると、本作で最も重要なのは、登場人物の生死を決める価値観だと思う。


『ピラニア3D』でピラニアに食い殺されるのは、立派なオトナたちの警告を無視して湖に入り、軽い気持ちで異性とイチャつく若者達だ。つまり、非童貞で、ヤリチンで、セックスを軽い気持ちで扱う人間だけが食い殺される。これはスプリング・ブレイクなる非常に羨ましいお祭りに参加している大学生ばかりではない。透け鋤けTシャツ祭りが楽しみで楽しみで仕方が無いポルノ映画監督や地底湖を調べる研究チーム達も含まれる。
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何故彼らが食い殺されるのかというと、アレクサンドル・アジャはボンクラ童貞時代が長かったからだろう。いや、今でも童貞なのかもしれん。チャラチャラと水着でイチャついてる若者なんて死んじまえ!……という、リア充に対する憎しみがここにある。


しかし、いくら「塩、テキーラ、ライム」なるスペシャル儀式をやろうとも、主人公だけは例外だ。何故なら主人公はあくまで幼馴染みの女友達が心配でポルノ撮影船に乗っただけだから。何故なら主人公はあくまで周囲からせっつかれてイヤイヤやっているだけだから。何故なら主人公はボンクラで童貞だから。良い女の前では緊張で喋れず、困ったら電話でママを呼び出す童貞っぷり! 子供がピラニアに食い殺されないのはまだセックスを知らない童貞と処女だから。ママはいくら巨乳でも大分セックスしてないシングルマザーだからだね!


でも、やっぱり童貞が作っているから、水着美女に対する憎悪と裏腹の愛情、いやさ欲望は隠しようがない。というか、隠す気がない。ビキニ美女が死ぬたびに勿体ないなと、どうせ死ぬなら一回やらせてくれと感じたのは自分だけだろうか。


そういうわけで、風俗店にいってガッツリと性的サービスを受けた後に風俗嬢に説教するような愉しさこそがこの映画の真の魅力だと思った。いやー、こんなエログロ映画けしからんよ、ウンウン。

*1:自分にとって『ドゥームズデイ』がつまらなかったのもそういう理由による