ラブずっきゅんプラス

渋谷の、井の頭線の出口ってあるじゃん。西側の、道玄坂の合間に出る方じゃなくて、スクランブル交差点やハチ公側に出る、まぁメインの方の出口だ。
で、上部にJRとの連絡路が走っている、その高架下ってあるじゃん。一昔前だったら、よく茶髪の兄ちゃんとかガングロ女子高生とかがティッシュとかコンタクトレンズのチラシとか配ってたところだ。いや、今も配っているか。
金曜日に用事があって、そこを歩いていたら、女子高生に呼び止められたのだな。ガングロでもギャルでも無い、普通の女子高生だ。


で、なんとしたことだろう。その量産型女子高が、「受け取って下さい」と言いながら、白い包みを差し出してくるではないか。
はっきりいって、一体何が起こっているのか、よく理解できなかった。
私は34歳の既婚の子持ちのおっさんで、女子高生に告白される心当たりなぞ皆無だ。いや、もっといえば、この34年間の中で、女子から告白された経験なぞ、一回も無い。好きとか、愛してるとか、好意を含んだニュアンスの言葉を受け取ったことも無い。結婚前に、嫁と付き合っていた頃ですら、無かった。ついこの前、「昔は好きだったのに……」という言葉を、吐き捨てるように投げかけられたことはあるが。


万が一、億が一の可能性で、美に対する価値観が変わった女子が存在するとか、世の中の「モテ」の価値観が裏返るとかして、私に告白したい女子高生が存在したとしよう。何故、渋谷? 別に、定期的に渋谷駅や井の頭線を利用しているわけじゃないし、本日ここにいるのも完全にイレギュラーな出来事だ。すわ、まさかストーカー!?


しかし哀しいかな、34歳のおっさんの脊髄反射的動作で、女子高生が差し出す包みを受け取ってしまった。
「ありがとうございます!」100万ドルの笑顔で、渾身のお辞儀をする女子高生。ええ娘や。でも、そのええ娘さ加減が、怖い。なんかドキドキする。


しかし、足早にその場を去った後、小包を確認すると、『ラブプラス』のシールが張ってあった。
ラブプラス
B00266QNYI
そうか、そういうことかー! 謎は全て解けた!


男子諸君、噂に聞く「これ、受け取ってください」が味わえます――「ラブプラス」バレンタインデー大作戦実施中 - ITmedia Gamez




中にはチョコポッキーと電話番号の書かれたカードが入っていて、電話すると「受け取ってくれてありがとう!」みたいなメッセージが聞けて、なんか背筋にぞんぞんくるような気分になった。ARコードとやらも記入されていたのだが、iphoneに専用のアプリを導入する必要があるらしく、そっちはまだ試していない。


いや、それにしても、世の中には悪いことを考えるオトナがいるものだと思ったよ。
電話番号とかARコードなんかはまだ良い、というか普通だと思うよ。私がスゲーなと思ったのは、キャンペーンガールに女子高生の格好させて、「受け取ってください」なんて言わせて、いきなり後ろ手に持たせていたチョコを差し出させるという、その発想だ。
あのね、あの井の頭線の中央口から駅の外に出た付近というのは、結構人通りが激しいわけですよ。私が歩いていた時も、周囲にはざっと2、30人くらいの人通りがあった。その中からわざわざ私に、いかにもオタ臭漂う30過ぎの男を選んでチョコを手渡しするわけよ! もう絶対に、控室代わりに使っているバンの中で悪いオトナが「メガネかけてて、モテそうになくて、でも可処分所得は結構高そうな2〜30代の男を狙って渡すように」とか指示出しているんだろうな。
しかも、Itmediaの記事ではチョコが一杯入った袋を片手に持っていたのだが、私の時は一個だけしか持っていなかったのだな。だから、本当にそこら辺の女子高生だと思ったし、本当にドキドキした。


で、多分『ラブプラス』の魅力というのは、そのドキドキ感だと想像するのだな。
私はこれまで『ラブプラス』をプレイする気なんてさらさら無くて、実際にプレイするよりもプレイした人の話を聞く方が100倍面白いぜと思っていたのだが、思わず帰りしなにソフトを購入しそうになってしまったよ。

いや、悪いこと考えるわー。つまりさ、どんなに想像力豊かな人間でも、ゲームやってる時間と、現実に街中を歩いている時間は質的に別物なわけよ。
でも、そこにこんなやり方でプロモーションされると、現実とゲームが、現実と虚構が、ない交ぜになったような印象を受けるのだな。要はメイド喫茶とか執事喫茶なんかと同じなのだが、自分の意志で入店するわけじゃなく、完全にランダム・エンカウントという点において、それらとは異なる。だから本心からドキドキする。本当に悪いこと考えるわー。


http://search.auctions.yahoo.co.jp/jp/search/auc?p=%A5%E9%A5%D6%A5%D7%A5%E9%A5%B9%A1%A1%A5%AB%A1%BC%A5%C9&auccat=0&alocale=0jp&acc=jp


ネットニュースじゃヤフオクで高値! みたいな盛り上がり方をしてるのだけど、正直信じられん。こんな受け取り方をしてしまった以上、ヤフオクに出品することに、まるで自分の思い出を売るかのような罪悪感がある。
一方で、ヤフオクに出品されたカードやポッキーを買う気にもなれん。それは愛をカネで買うということで、そんな受け取り方をしてもあのようなドキドキ感は味わえるとは思えないからだ。


そういうわけで、ポッキーはどう考えても将来モテなさそうな息子と一緒に美味しく頂きました。